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シャーマンへの道「15 それ」

 
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脳科学と心理学に精通し、16年間で1万人以上の相談にのってきたシャーマン。「信じる力は、世界を変える」がモットー。自分自身を信じる力・愛を受け取る力を育てる方法、激動の時代を乗り切る極意を教えている。 著書「なぜ眠り姫は海で目覚めるのか? 超ネガティブ思考を解除する3つのメソッド
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「『それ』はひそかに口伝で伝えられてきたんです」
 

 神戸圭子は電話の向こうで話し始めた。
 日本は全国に無数の寺社仏閣が散らばっているが、その中でも力のある神社やお寺とそうでないところがある。差しさわりがあるので名前を明かすことはできないが、ごく限られた寺社仏閣の神職の間でひそかに伝えられてきたのが、人類救済のための方法だ。それが、これだ。正確な言葉は忘れてしまったが、たしかあの時、圭子はこう言った。
 

「『それ』を作らなければ、その困難な時代を・・・大峠を超えることができない」
 

 大峠とは戦争や天変地異などによって起きるとされている人類存亡の危機のことで、関係者はひそかにそれを心配して本気でその危険を回避しようとしてきたのだ。その主だった活動が祭りや神事だ。表神事は一般に公開されているお祭りなどの様々な行事で、これは多くの一般参拝者でにぎわう。これ以外に裏神事というのがあって、こちらが本当の神事で、表の祭りの前日に行われることが多く、当然非公開だ。
 

 『それ』も裏神事に属する。
 ただ口伝で伝えられてきたものの、神職をはじめとする関係者たちにも正直なところ『それ』を作る方法はずっとわからないままだった。関係者の中には突出した才能の持ち主も何人かいて、彼らがきっと『それ』を作ってくれるに違いないという期待も高まってはいたものの、2002年当時は依然として暗中模索の状態だったらしい。
 

 神戸圭子(仮名)はそうした関係者の中枢深くにいたのだが、彼らのやり方では『それ』は作れないと思っていた矢先にわたしと出会い、ずっとわたしの話を聞きながら、わたしが六芒星すなわち『それ』を起動するのをどきどきしながら黙って見ていたのだと言った。
 

 正直、この話を聞いて絶句した。
 現代日本でそんな世界観をもって活動していた人々がいるなんて想像もしていなかった。
 

「『それ』のことは絶対に公開しないでください」
 

 圭子は釘を刺すように言った。
 どうやら関係者たちにとって、誰が『それ』を作るのかは大事な問題らしい。
 『それ』完成が人類救済だというなら誰が作ってもいいような気がするが、そこは彼らも人間、我欲が捨てきれないのだ。嫉妬や羨望、自己顕示欲といった感情でぐちゃぐちゃになって、場合によっては出来上がったばかりの『それ』に悪影響を与えかねないというのが理由らしい。
 

 事実は小説より奇なりというが、案外人間社会なんてそんなものかもしれない。
 確固とした社会的地位があって、多くの日本人が当たり前のようにその存在を受け入れている寺社仏閣が普通の人々から見たらファンタジー映画か小説のような世界観を信じて活動をしており、実際に人とモノとカネが動く。
 

 かれらは『それ』という物語世界を生きているのだ。
 だが誰もがそれぞれの物語世界を生きている。
 もっというならわたしたち人間はなんらかの物語を信じなければ生きることができない。
 戦後の高度成長期に多くの人々が信じた価値観、80年代バブル期、バブル崩壊後の就職氷河期、2000年問題と終末論、911、リーマンショック、311後の世界、すべてそうだ。同じ時代を生きた誰もが同じ時代背景を持ち、そのうえで共通の物語を信じる場合もあれば、独自のオルタナティブな物語を生きようとする人々もいる。
 

 そう考えると、わたしは神職たちを笑えなかった。
 わたしもまた宮古島から始まった自分の物語を信じたのだ。
 そして白龍に導かれて『それ』を起動させたときの、あの体感とその瞬間の雷雨は紛れもなく本物だった。
 

 だが圭子の話を聞いているうちになんとなく嫌な気がしたのだ。
 それは一連の行動は私個人の物語だったはずなのに、いつのまにか寺社関係者の信じる大きな物語のパーツに否応なしに組み込まれようとしている現実を突きつけられたせいだ。
 

 はなから圭子以外の誰かに話す気などなかったが、公開するなと言われるとなんだかものすごく不自由で枷をはめられたような気がする。実際、『それ』の話は以後10年以上にわたって誰にも話さなかったし、当然ブログにも書かなかった。それが当時想像していた以上に心の枷になっていた。
 

 一般的に見たり聞いたり感じたりしてきた経験によって感性が育ち、そこから創造物を作ってゆくが、経験のごく一部を秘密の小箱にしまいこむことで、創造力の一部が麻痺するのではないだろうか。わたしは自分自身に『それ』の件を公開しないという制約を設けたことで、ずっと感覚や創造性の一部にもやがかかっているように感じていたのだ。
 

 『それ』についての2015年のわたしの個人的な見解を書いておこうと思う。
 圭子は誰かが『それ』を作れば世界は救済されると言ったけれど、いまのわたしは彼女たちとはちょっと意見が違う。
 

 『それ』=『六芒星』とは非常に個人的なものだと思う。
 龍を起こすという行動を通して、じつはわたしは自分自身を起こしていたのだ。
 どういうことかというと、長くなるので続きは次回に。
 
シャーマンへの道「16 『それ』の本当の意味」につづく)
 
2015年9月

 

【シャーマンへの道シリーズ】
シャーマンへの道「1 やりたいこと」
シャーマンへの道 「2 エネルギーの使い方」
シャーマンへの道「3 宮古島」
シャーマンへの道「4 ユタ」
シャーマンへの道「5 ウハルズの謎」
シャーマンへの道「6 白龍」
シャーマンへの道「7 決断」
シャーマンへの道「8 禍津神の封印」
シャーマンへの道「9 暗黒龍王」
シャーマンへの道「10 心の暗黒面とフォーカシング」
シャーマンへの道「11 天河弁財天」
シャーマンへの道「12 大神神社と土砂降りの雨」
シャーマンへの道「13 「意識を飛ばす 竹生島弁財天」
シャーマンへの道「14 六芒星起動」
シャーマンへの道「15 それ」
シャーマンへの道「16 『それ』の本当の意味」
シャーマンへの道「17 そして、神がみえなくなった」

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