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シャーマンへの道「9 暗黒龍王」

 
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脳科学と心理学に精通し、16年間で1万人以上の相談にのってきたシャーマン。「信じる力は、世界を変える」がモットー。自分自身を信じる力・愛を受け取る力を育てる方法、激動の時代を乗り切る極意を教えている。 著書「なぜ眠り姫は海で目覚めるのか? 超ネガティブ思考を解除する3つのメソッド
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 深夜、明かりを落とした自室で祈ろうとしたときのことだ。
 手を合わせ、目を閉じようとした刹那、目の前に真っ黒い龍が姿を現した。
 闇が凝縮したような漆黒の体に金色に光る目。
 白龍もとてつもない覇気だが、黒龍のそれは心の奥底の深いところに入り込み、ひとの心のいちばん弱いところをじんわりとえぐり取るような、痺れるようなエネルギーだった。
 

 どのぐらい対峙していたのか。 
 わたしは息を止めたままだったことに気づいて小さく息を吐くと、心の中で誰何した。
 

— 何者か?
 

「暗黒龍王」
 

 ぐわーんと響くような振動が伝わってきた。
 

―― 何を司るのか?
 

「混乱と破壊、死と再生」
 

 暗黒龍王の意志が胸の中にダイレクトに伝わってくると同時に人類の過去の歴史がパノラマのように胸の中にひろがった。人々が争い、破壊された町のあちこちで火の手が上がり、もうもうと黒煙が立ち上る。黒龍は逃げ惑う人々や無残に瓦礫と化した都市を見下ろすようにゆっくりと上空を旋回している。
暗黒龍王は時代の節目に現れるということか。
 

 全身が粟立った。
 そんなものがどうして? それじゃまるで・・・・・。
 

 精神の緊張の糸が途切れそうになったとき、不意に黒龍の気配が消えた。
 全身の力が抜けた。
 

 わたしは救いを求めるように白龍に意識を向けた。
 クリアーで愛に満ちたエネルギーが返ってくる。
 

 と、同時に衝撃の事実が伝わってきた。
 暗黒龍王は白龍の眷属であり、白龍が暗黒龍王を呼んだというのだ。
白龍の巫女なら暗黒龍王ぐらい手なずけられなくては仕事にならないということらしい。
つまりシャーマンとしての試験ということか? 
 

 わたしは絶句した。
 あんなおっかないエネルギーを出しているヤツをどうしろというのか。
 白龍からのいらえはない。
 自分で考えろということか。
 

 翌日も暗黒龍王の気配がする。
 普通にキッチンで仕事をしていても、ふと見るとキッチンの戸口からゆったりと外に出ていくのが見えたりするのだ。なによりも参ったのは暗黒龍王のエネルギーは自分の中の目を背けたい、できればなかったことにしたい部分をえぐり、白日の下にさらすような性質なのだ。
 

 あるひとは金銭、あるひとは名誉、あるひとは物欲、あるひとは愛など、こだわりはひとそれぞれだが、それを自分で認識していない状態だと、そのこだわりはしばしばそのひとにとっての弱点になる。
 弱点がない人間なんていない。
 それゆえ暗黒龍王は恐ろしいのだ。
 自分の中の破壊願望や失うことへの恐怖といった暗黒面が刺激されて苦しくてたまらなくなる。
 

 文化によって祈りにもさまざまな方法があるが、わたしの場合は祈るときは目の前の神霊やもののけたちを胸中に呼び入れて、ただありのままの姿を受けとめ、抱きしめる。
 

 この方法(※注)は少しでも怖いとか、自己保身の気持ちがあると相手に飲み込まれたり、シャーマン自身がダメージを負う危険がかなり高い。
 だから祈るときは自分の命はいったん捨てる。
 祈るためにはどうしても恐怖や不安といった自分の心の暗部を見つめる必要が出てくる。
 その作業なしには深い祈りは成立しないといってもいい。
 

※注 祈りの勉強会で教えている祈り方はこの方法と違って、初心者向けの安全なやり方なのでご安心くださいね。
 

 黒龍が現れてから三日目の夜、意を決して暗黒龍王と対峙した。
 痺れるようなぞくりとするエネルギーが伝わってくる。
 わたしは師のもとで訓練を積んだ優秀なシャーマンじゃないし、そうしたスキルもない。わたしにできることがあるとすれば、共にいることだけだ。それは白龍が教えてくれた。
 

 わたしは目を閉じ、暗黒龍王を胸の中に呼んだ。
 

――ともに在られよ。わが命、そなたに預けよう。
 
 

 胸中でそう呼びかけた。
 暗黒龍王のエネルギーとわたしの魂が重なってひとつになる。
 

 不意に胸の中に愛がひろがった。
 その瞬間、暗黒龍王の体は一対の巨大な赤と緑の龍神に分かれた。
 あれほど恐ろしかった暗黒龍王のエネルギーが限りなく深い愛に満ちたものに変わった。
 喜びの波動が伝わってくる。
 

 暗黒龍王の本来の姿は一対の双龍だった。
 もちろんもともとが目に見えないエネルギー体なので、わたしたち人間の目にはさまざまな姿で映る。
 恐れを抱いていた時は破壊神にしかみえなかったが、恐怖を横に置いて、目の前の龍王を無心で受け入れたとき、恐ろしいエネルギーの奥にある深い、包み込むような愛に触れた。
 
 長いこと私の中にあった幼い子どものような、失うことへの恐怖、孤独な記憶があたたかな力に包まれてゆく。
 まるでひとりではない、自分も素沙王も、みんなずっとそばにいる、最初から失うものなど何もないのだと言われている気がした。
 

 こうして暗黒龍王はわたしの眷属となった。
 どうやら白龍の仕組んだシャーマンになる試験は合格したらしい。
 
 ふう・・・・。次は天河だ。
 
シャーマンへの道「10 心の暗黒面とフォーカシング」につづく)
 
2015年9月

 

【シャーマンへの道シリーズ】
シャーマンへの道「1 やりたいこと」
シャーマンへの道 「2 エネルギーの使い方」
シャーマンへの道「3 宮古島」
シャーマンへの道「4 ユタ」
シャーマンへの道「5 ウハルズの謎」
シャーマンへの道「6 白龍」
シャーマンへの道「7 決断」
シャーマンへの道「8 禍津神の封印」
シャーマンへの道「9 暗黒龍王」
シャーマンへの道「10 心の暗黒面とフォーカシング」
シャーマンへの道「11 天河弁財天」
シャーマンへの道「12 大神神社と土砂降りの雨」
シャーマンへの道「13 「意識を飛ばす 竹生島弁財天」
シャーマンへの道「14 六芒星起動」
シャーマンへの道「15 それ」
シャーマンへの道「16 『それ』の本当の意味」
シャーマンへの道「17 そして、神がみえなくなった」

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