シャーマンへの道「6 白龍」
受話器の向こうの圭子の言葉に思わず後ろを振り返ったわたしだったが・・・・
↓ ↓ ↓
とくに何もかわったことはない。
「き・・・・・・キョーコさんの後ろに龍がいる!」
受話器の向こうで圭子が喘ぎながら言ったが、わたしには何も見えなかった。
「何もいないけど?」
「いますよ。真っ白い龍がこっちを見てます」
そういわれても本当に何も見えないのだ。
「その宮古島の唄は暗号ですね。長いこと歌い継がれてきた歌詞なので、誰もそんなことは思わないでしょうけど、しかるべき時にしかるべき人間が歌うと発動するんじゃないでしょうか」
「うーん・・・・・」
「キョーコさんはそういうの嫌いだから信じないかもしれないですけど、この龍はキョーコさんが呼んだんですよ」
むちゃくちゃな理屈だ。
「とにかくキョーコさんが祈るときでいいので観てみてくださいね。絶対にいますから」
翌朝、いつものように朝の祈りを捧げていた時だ。
ふと昨日の圭子の言葉を思い出した。
「まさかね・・・・」と思いながら、例の唄を口にした。
「サーヨーイ」
そこまで言い終えた瞬間、部屋の中の空気が動いた。
次の瞬間、わたしは強い風圧で1メートル後ろの壁まで思いきり吹き飛ばされた。
一瞬息が止まった。
目の前に、真っ白に輝く巨大な龍神の顔があった。
自宅の一室で座っていたはずなのに、龍神の放つ光がまぶしくて家具も天井も見えない。
わたしはこのとき生まれて初めて龍神をみた。
占い師なんて職業をやっていると、中には龍とかそういうものを見たことがある知人もいて、そんな話を聞いたときは正直あり得ないと思っていた。昨日圭子の話を聞いた時もそうだ。子供の頃から神の存在は信じていて、朝夕祈っていたのもかかわらず龍伝説はファンタジーだとばかり思っていたのだ。
だからそのときは本当に絶句した。
風圧のようなもので体が押される。
部屋いっぱいにひろがった白龍の顔の向こうに白く輝く胴体が続いており、それは狭い自宅の空間を超えて存在しているようにみえた。
まじかに龍の息遣いが伝わってくる。
龍神とはよく言ったものだ。
ヨーロッパの龍伝説、つまりドラゴンは基本的に肉食の恐竜的なイメージがあって怖い。
でも日本では龍神信仰を観てもわかるように、獣的な感じではなく、神気を発した超越的なイメージが強い。
実際、目の前の白龍は物理的に伝わってくる強烈な覇気を発していて畏怖を感じた。
恐怖と同時に感じたもうひとつの感情があった。
そう、わたしはその龍神を知っていた。
茫然としているわたしの目の前で不意に龍神は消えた。
わたしはどっと力が抜けて畳に寝転がった。
その日を境に白龍の姿が見えるようになり、コミュニケーションをとるようになった。
この頃、わたしはすごく葛藤していた。
神様を感じたり、未来を予知する程度なら何の問題もないが、3Dのようにリアルに龍神まで感じている自分は、頭がおかしくなってしまったんじゃないだろうか?
「これ、禅でいうところの魔境だよなあ」
それでもリアルに見えて感じてしまうんだから仕方がない。
時代を超えた古代の歴史とか、いわゆる前世とか過去世と呼ばれるものとか、とにかく白龍といるといろんなものが見えてしまうのだ。
グダグダ考えても仕方がない。まず作品を書こうと思った。
観えたもの、感じたものを全部作品にしてやる。
そう決めると、さっそく執筆に取りかかった。
不眠不休。ほぼ3週間で書き上げた。
ちょうど2002年3月10日のことだった。
ほっとしたら急激に眠気が襲ってきた。
わたしは3日間ひたすら眠った。
そして目が覚めた時、世界が変わっていた。
この6年間、物語を書きたくて居てもたってもいられなくて、占い師をやりながらも時間を作っては、ひたすら書き続けていた狂おしいほどの情熱。
わたしにとって書くことは生きることそのものだった。
なのにその気持ちがまったくなくなっていたのだ。
やりきったという思いとともに、わたしの物語作家への夢は消えた。
そして新しい扉がひらいた。
(シャーマンへの道「7 決断」につづく)
2015年9月
【シャーマンへの道シリーズ】
シャーマンへの道「1 やりたいこと」
シャーマンへの道 「2 エネルギーの使い方」
シャーマンへの道「3 宮古島」
シャーマンへの道「4 ユタ」
シャーマンへの道「5 ウハルズの謎」
シャーマンへの道「6 白龍」
シャーマンへの道「7 決断」
シャーマンへの道「8 禍津神の封印」
シャーマンへの道「9 暗黒龍王」
シャーマンへの道「10 心の暗黒面とフォーカシング」
シャーマンへの道「11 天河弁財天」
シャーマンへの道「12 大神神社と土砂降りの雨」
シャーマンへの道「13 「意識を飛ばす 竹生島弁財天」
シャーマンへの道「14 六芒星起動」
シャーマンへの道「15 それ」
シャーマンへの道「16 『それ』の本当の意味」
シャーマンへの道「17 そして、神がみえなくなった」