サバイバルの極意
水深30メートルの海底でエアがきれたら、あなたならどうする?
さてみなさんはスキューバダイビングというスポーツをご存知だろうか?
・・・・誰でもそのぐらい知っている、なんてツッコミいれられそうだよね。
わたしがダイビングのCカードをとったのは二年前の冬のこと。
あ、Cカードというのは、いちおうあるレベル以上のダイビングの実地研修を受けて、なおかつそれぞれの協会の筆記試験に合格すれば発行されるもので、まあ自動車の免許証みたいなものだと思ってくれればいいかな。
ダイビングに行くときは、たいてい現地のダイビングショップのお世話になる。このとき、事故防止もかねて、ほとんどのショップではカードの提示を求めることが多い。
で、話を戻すと、わたしがCカードの講習を受けたのは海底遺跡でも有名な与那国島。
与那国島はいわずとしれた国境の島。なんせ台湾から100キロと離れていないんだよね。当然東京からの直行便はない。
こっちから与那国に行くには、羽田から那覇を経由して石垣島まで飛び、いったん石垣島に降りる。石垣島から与那国まではプロペラ機でほんの20分程度なんだけど、たいてい接続の関係で2~3時間は待たされるんだよね。
まあ、そんなわけで、真冬の与那国島に飛んだわけです。
じつは行ってから知ったんだけど、与那国島はハンマーシャークヘッドのメッカで、ダイビングのスタイルはドリフトがメインなんだよね。
ダイビングするときはビーチから入るか、もしくはボートで沖のポイントまで行って、そこから海にもぐる。ふつうはダイバーたちがもぐっているあいだ、船はその場に停泊して、かれらが上がってくるのを待つんだよね。
これにたいして、ドリフトというのは潮の流れのあるポイントで潜る場合に使われる方法で、潜る場所と浮上する場所が違う。ダイバーたちが海底を移動しているあいだ、船も浮上する予定のポイントに移動して待っているわけ。当然、ダイバーにもそうした自然条件に見合った技術が要求されるんだよね。
つまりドリフトがメインだってことは、それだけ上級者レベルの海なんだよね。
これは初心者にとってはかなりきつい。はんぶんベソかきつつ、インストラクターさんの丁寧な指導もあって、六日間の講習でなんとかCカードを取得することができた。
さて話はここから。
晴れてダイバーの仲間いりしたわたしは、講習が終わった翌日、インストラクターふたりも含めて6人で海底洞窟に潜ったんだよね。
ときどきエアの残量を確認しつつ海底散歩を楽しんでいたときのこと。
なんとなく息苦しい。
エアの出が悪い?
急に不安になってゲージを確認すると、針が振り切れている。
一瞬、血の気が引いた。
なんせ水深30~25メートルの地点だもんね。
バディのインストラクターに手振りで浮上したいと伝えると、「待て」との指示。
水深30メートルの地点から一気に浮上すると、当たり前だけど水圧の関係で潜水病になるリスクが大きい。なので浮上する場合は、ゆっくり体を慣らしながらあがってゆくのが原則なんだよね。
わたしは講習で習ったことを思い出した。
講習では、エア切れなど、さまざまな緊急時の対処法を習う。エア切れの場合でも、いくつかの方法があって、それぞれの危険度に応じて使い分けるわけ。
このときのケースでは、針が振り切れてもまだいくらかタンクの底にエアが残っている状態だったので、それを吸いつつ原則どおりゆっくりと体を慣らしながら浮上することになった。さすがに通常の三分の一ぐらいの空気しか吸えないっていうのは、気分的に不安になりそうになるんだよね。なんせ水深30メートルだから(--;
結局、海面に浮上したとたん、完璧にエアがなくなったものの、無事帰還できた。
あれはすごくいい経験になった。
講習の最初に言われたのは、「海中でトラブルが起きた場合、まず落ち着け」ってことだった。
海難事故の場合、パニックになったら、助かる確率は格段に下がる。ダイビングは基本的に二人一組で潜る、いわゆるバディ制なんだよね。でもパニくっている相手には、バディでさえ危なくて近づけない。へたに近づけば、二重事故になりかねないもの。パニックを起こしてさえいなければ、ほとんどのトラブルは対処法がある。だから自分の置かれた状況を冷静に分析して、的確な対処をすればかなりの確立で助かるんだよね。
このときの経験が役に立ったなあと思ったのは、昨年伊平屋島で潜ったとき。
浮上すると、そこで待っているはずのボートがいない。
そのあたりは島からかなり離れていて、見渡すかぎり水平線。おまけに台風が近づいていたせいで、水中はそうでもなかったけど、海上はけっこう波が高い。
「あれぇ・・・おかしいなあ。どこに行っちゃったんだろう」
って言いながら、インストラクターさんは救難用の信号を上げている。
(げっ・・・・)
さすがに一瞬、不安になった。
でもここは海の上だし、海底のエア切れよりはずっとマシか・・・・・。
なにより冷静さが命を救うっていうのは骨身にしみていたから、これをネタにコラムのひとつも書いてやろうってな気持ちで客観的に状況を眺めていた。
そうこうしているうちに、ほどなくボートも到着して一件落着。
トラブルに遭遇したら、まず落ち着けっていうのは、海難事故だけじゃなくて、すべてに通じるんだよね。
わたしのセッションを受けているひとは、この話は耳にタコができているかも(笑)。
激しい怒りや落ち込みも海難事故と同じように対処すればいい。
いわく、感情を味わいつつ、感情におぼれている自分を客観視せよ。
先日、東京で連続四連ちゃんの地震があったけど、これもまったく同じ。
マグニチュード4.2だろうが7.0だろうが、規模に関係なく「冷静」になることが命を救う。
すくなくとも、しなくていい怪我はせずにすむかもしれない。
これはけっこう訓練がいるので、常日頃から自分を客観的に眺めることを心がけるといいかもね♪
2004年6月3日
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