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やりたいこととかぐや姫

 
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脳科学と心理学に精通し、16年間で1万人以上の相談にのってきたシャーマン。「信じる力は、世界を変える」がモットー。自分自身を信じる力・愛を受け取る力を育てる方法、激動の時代を乗り切る極意を教えている。 著書「なぜ眠り姫は海で目覚めるのか? 超ネガティブ思考を解除する3つのメソッド
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 夢をみた。
  

 なぜかそこは月の宮殿の大広間。磨きぬかれた虹色に輝くクリスタルの床のところどころに、やはりクリスタルの太い柱があって、それが遙か天まで届くんじゃないかと思われるほど高い天井まで伸びている。そこに薄絹を羽織った優雅な姿の天女たちやどこかのお寺の門によく置いてある神将像に似た姿の人々が大勢いた。
 

 ふと見ると、広間の中央よりすこし奥まったところに、一段高くなっている六角形の座布団の形をした玉座があり、そこに月の女神とおぼしき女性が座っている。
 

(かぐや姫だ・・・・・・)
 

 即座にそう思った。
 するといつのまにやら、わたしがかぐや姫とおぼしき女神そのものになっている。
 なんせ夢だからね(笑)。
 

 かぐや姫の視点で広間を見渡すと、美しく着飾って、ただそこで優雅に舞っているように見えた女官や衛視たちが、じつは忙しく働いていることに気がついた。機を織る者やら書き物をしている者、広間の床を磨いている者、そうかと思うと銀色のUFOの剥げた塗装を塗りなおしている者など、それこそみんな優雅な芸術家のような手つきでひたすら働いているのだ。
 

 は~どうやら夢の中の月には、いわゆるブルジョア階級というのは存在しないらしい。働かざるもの食うべからずという理念が厳然と機能しているのには驚いた。誰ひとりとして遊んでいる者はいない。感心しながら、ふと気がついた。
 

 いた!
 
 
 たったひとりだけ、暇をもてあましている人物が・・・・・・。
 
 
 そう、かぐや姫そのひとだ。
 

 かぐや姫の視点に戻ると、かぐや姫は玉座にすわったまま、遙かかなたまで見渡すことができるらしい。 宮殿の外には見渡すかぎりの白い砂と透明な水が流れていて、女たちが水汲みをしている。やがてかぐや姫の視線は頭上の地球に移った。広大な海やどこまでも続く森。畑を耕す農夫やかまどに薪をくべる女の姿。やがてかぐや姫の瞳はちいさな漁村をとらえた。
 

 ふとその瞳が一点に釘付けになった。
 視点の先を追いかけると、若い漁師が小舟に乗って魚を釣っている姿が目に飛び込んできた。
 ふいにかぐや姫が立ち上がった。
 

  騒然とするお付の女官や衛視たちなど歯牙にもかけず、かぐや姫はひょいと玉座を降りると、まっすぐにバルコニーに出た。いつのまにもっていたのか、丈夫そうなロープをバルコニーの端にしっかり固定すると、レンジャー部隊よろしくするすると降り始めた。
 

 かぐや姫の気持ちがわたしの中に飛び込んできた。
 

(わたしも、あの魚を釣ってみたい!)
 

 そこで目が覚めた。
 なんだか朝起きて、ひとりで笑ってしまった。そりゃ嘘だろうって。
 ひとしきり笑ってから、ふと思い出した。
 

 そういえばまだ学生の頃、わたしはサハラの村で井戸を掘りたかったんだっけ。
  学生の頃は誰でも将来何になりたいかとか、どんな職業につきたいかとか考えるよね。わたしの場合は、海外青年協力隊に参加したかった。安全な場所で企画に参加するのではなく、現地で汗水流して井戸を掘ったり学校を造ったりという、最前線の一兵卒という生き方がしたかった。
 

 でも健康チェックでにべもなく落とされた。じゃ技術職なら・・・・ということで、臨床検査技師の資格を取って医療スタッフとして現地に行こうと思った。一応キャリアが必要ということで、何年か医療現場で働いたのち再びトライ。以前腎臓病を患ったことがあって、病歴のところで引っかかってまた落ちた。
 

 正直に言えば、わたしは必要とされたかったんだと思う。そして自分の働いた結果を手ごたえとして感じたかったんだよね。その手段として、ひとによってさまざまな職業を選ぶのだろうけど、わたしの場合はそれが海外青年協力隊だったんだよね。でも仕事にはやっぱり向き不向きっていうのがある。
 

 道が完全に閉ざされたと知ったとき、大酒くらってグチをこぼしていたら、友達にこう言われた。
 

「気持ちはわかるけど、あんたには無理なんだからあきらめなさい。わざわざ海の向こうに行かなくたって、この場にいてもできることはたくさんある。あんたの書いた詩や絵でも、もしかしたらひとりぐらい救われる人間がいるかもしれないじゃん」
 

 その時、そうかもしれないけど、わたしは絵も詩も興味ないよ、と心の中で叫んでいたっけ。
 その後紆余曲折があって今の仕事についているけど、今でもときどき遠い砂漠の熱風を思い出す。
 

 でも後悔はしていないかな。
 当たって砕けるまでは頑張ってみたし、あの頃望んだことを、今わたしは形を変えてやっているんだと思う。かぐや姫も遠い地球で自分の望んだ生き方をしてみたかったのかもしれない。結果、それは挫折したけれど、その経験があって、はじめて本当の意味で月の女神として心から納得して働けるのかもしれないよね。
 

 それにしても、地球に飛来できるほどの超能力(?)をもったかぐや姫が、なんでロープみたいな原始的な方法でバルコニーから降りるんだろうね(←だから、夢だってば。夢)。
 

                   2003年4月14日 キョーコ(カイロンの翼より再掲)
 

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 11年前、当時運営していた音楽とアートのホームページに掲載していた記事なんだけど、ひさしぶりに読んだらなんだか感動しちゃったので再掲です。
 

 11年前といえば、まだ41歳!
 若過ぎる(爆)。
 夢を記録しておくと面白いね。いま読むと、あらためて叡智として受け取ることができる。新しい読者さまには新しい記事として、古くからの読者さまには懐かしい記事として読めたでしょうか。
 
2014年3月6日
 
 

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