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君が世界を照らせばいい

 
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脳科学と心理学に精通し、16年間で1万人以上の相談にのってきたシャーマン。「信じる力は、世界を変える」がモットー。自分自身を信じる力・愛を受け取る力を育てる方法、激動の時代を乗り切る極意を教えている。 著書「なぜ眠り姫は海で目覚めるのか? 超ネガティブ思考を解除する3つのメソッド
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 懐かしいシリーズ第二弾というわけで、2005年3月から11月まで発行していたメールマガジン『魔女のすすめ』の2005年11月15日発行号のコラムをお届けします。
 

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☆★ 君が世界を照らせばいい 2005年11月15日
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 こんにちは。さて今日のテーマはこれ。
 『人はなぜ苦しい経験をするのか?』
 こんな言葉を耳にしたことはない?
 
  
 「どうしてわざわざこんなに苦しい経験をする必要があるのかわからない」
 

 人生は楽しいことばかりじゃないものね。
 それなりの年齢になれば、誰だっていちどぐらいはこんなせりふを口にしたことがあるかもしれない。
 

 わたし自身の経験でいえば、若い頃、当時のパートナーとの関係がうまくいかなくてとても苦しかった時期があった。
 その頃のわたしは彼のマイナス思考がたまらなくいやだった。
 彼が物事を悲観的にとらえて、ネガティブに言葉を吐いたりすねたような行動をするたびに、無力感を感じていたんだよね。
 

 どうしてもっと前向きに物事を考えないの?
 その考え方が物事を滞らせているのになぜ気づかないの?
 

 わたしは心の中でそう叫んでいた。
 けれどわたしがそれを言葉にするたびに、彼の心はいっそうかたくなになっていったんだよね。
 

 途方にくれたわたしは、ある日ふと思い出した。
 子どもの頃、わたしは夕方になると悲しくて悲しくてしかたがなかったんだよね。
 なにが悲しいのかわからない。
 

 ただ山の端が夕焼けに染まる頃、友達と別れて家路に向かう。
 玄関の引き戸をあけると、部屋の中から夕餉の匂いがただよってくる。
 ごくありふれた風景のなかで、胸の奥からわけもなく悲しみがこみ上げてくる。
 

 なぜだろう?
 
 
 あの頃、両親の仲がよくなくて、母はいつも泣いていた。
 まだ小学生だったわたしは母の笑顔を守りたかったのだと思う。
 けれどどんなにわたしが母の望むように振舞っても、悲しみでいっぱいだった母の心を救うことはできなかった。
 

 自分の人生に絶望し、必死で苦しさに耐えていた母には子どものわたしをありのまま受け入れる精神的な余裕も、わたしの気持ちを汲む力もなかったんだよね。
 

 子どものわたしはそんな自分自身に対する無力感でいっぱいだった。
 ほんとうはまだ親に愛して欲しい年頃なのに必死で母を守ろうとして、そのことでいっそう傷ついていたわたしのたったひとつの感情表現が夕方泣きだったのかもしれない。
 

 その日、わたしは遠い子どもの頃の自分を思い出した。
 パートナーの心を救えない? 
 それは子どもの頃、母に対して感じていた気持ちと同じだったんだよね。
 

 ただ母親に笑顔でいてほしかった。
 それが子どものわたしにとっては、愛されている実感そのものだったから。
 

 いまならあの頃の自分にこう言ってあげられる。
 
 

 あなたはそこにいるだけでお母さんを救っているんだよ。
 あなたが生きているということそのものがお母さんにとって救いなんだよ。
 

 たとえ苦しくてありのままのあなたを受け止める余裕がなくても、眠っているあなたの姿を見て、どれほど生きる勇気を受け取っただろう。
 ただ弱さゆえに、幾度となくあなたの心を踏みにじったかもしれない。
 

 けれどそれでも、あなたがいたから生きてこられた。
 あなたの命そのものが、まるで真っ暗な森の中で輝く暖かな明かりのように、お母さんにとって生きる希望だったんだよ。
 

 あなたは、そのままのあなたのままで、すでに世界を照らしているんだよ。
 
 

 子どもの頃の自分がにっこり微笑んだ。
 そしてすっと肩の力がぬけた。
 

 彼もまた昔のわたしや母のように、痛みや苦しみを抱えながら必死でもがいていたのかもしれない。
 わたし自身が苦しさの渦中にいたから、彼がその痛みを乗り越えるのを黙って見守ることができなかったんだよね。
 

 彼が彼自身にとって、いまの生き方よりももっと楽な状態に変化してゆくのは時間がかかるかもしれない。
 けれどそのことでわたしが無力感を感じる必要はない。
 

 ただ彼が彼の人生のプロセスをゆっくり生きてゆくのを静かに見守っていればいいと、そのとき思った。
 なぜなら母がそうだったように、彼の人生の課題は彼以外のほかの誰にもかわってあげることはできないんだから。
 

 唐突だけど、『バッドマン ビギンズ』という映画を観たことがある?
 アクションものなんだけど、その映画のなかで、古い井戸(?)の中に落ちた少年時代の主人公に、助けにきた執事がこう伝える場面がある。
 

「ひとは這い上がる方法を学ぶために穴に落ちるのです」
 

 そうなんだよね。
 這い上がる方法を学んだとき、ひとはより強く優しくなれる。
 井戸の中に落ちた痛みも、這い上がる過程でもがく苦しみも知っているからこそ、同じように痛みを感じながら生きている自分以外の人間のありのままの姿を愛することができるのかもしれない。
 
 

 君は君のままでいい。
 

 そして
 もしも悲しみの真ん中にいて、世界が暗闇だと思うなら、自分の中にちいさな明かりをともせばいい。
 それはきっと世界を照らすよ。
 

 だって君はそのままで、世界を照らす力をもっているんだから。
 

2005年11月15日 キョーコ『魔女のすすめ』より
 
2014年3月7日
 

◆関連記事
2005年11月20日 『破れたハートの癒し方』

 

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