16年前に視たある光景がわたしの人生を変えた② 「チャレンジ」
2002年10月、祈っている最中に降りてきたユリ花の咲く風景に導かれるように与那国島に行って、話の流れでダイビングのCカードを取ることになったわけなのですが・・・・。
前回までのストーリー 「はじまりはユリの匂い」
というわけで、16年前に与那国島でのCカード講習から戻ってすぐに書いた当時の文章をアップします。いまのわたしには絶対に書けない初々しい恐怖感やそれを何とかしようとあがいて考え出したアイデア、そして感動が伝われば嬉しいです。
あ、文中に出てくる「キョーコ」は私のハンドルネームです。
えっ? そんなの聞いてないよー
お正月明け早々、日本の最西端の島、与那国島に行ってきました。羽田空港から約三時間半、途中石垣島でRACに乗り継ぎ、さらに20分。ようやく与那国空港に到着したのはお昼ごろ。空港に着くと、地元のダイビングショップのスタッフが車で迎えに来ていました。
ショップは空港から車で10分ほどのところにある久部良の集落にあって、日によっては海を隔てて100キロほどの彼方に浮かぶ台湾が見えるといいます。
出迎えてくれたのは、今回キョーコの講習を担当するインストラクターの上田さん。期待と緊張で内心ドキドキしつつお店に向かいました。今回の目的は与那国海底遺跡にじかに触ること。そのためにはまずダイビングのCカードといわれるものを取得しなければいけないんだそうです。Cカードにもいくつか種類があって、今回わたしが取ろうとしているのはオープンウォーターというクラス。これを取ると、ようやくダイバーの仲間入りという、いわば入門編みたいなやつかな。
講習の内容は学科と実技のふたつ。最終日にはいちおう学科の試験があるんだって。ちょっとこれは計算外だった。まさか与那国まで来て勉強するとは思わなかった。ちなみに講習で来ているのはわたしひとり。お客で来ているほとんどのダイバーがダイビング本数100本以上のベテラン勢、四桁台(!)のダイバーも数人いるというレベルの高さ。
そんなわけで、この日の午後は軽く学科の講義を聴いて、翌日からさっそく実技が始まりました。
ウェットスーツに着替え、ショップから1分ほどの近場のビーチに到着すると、まずはフィンとシュノーケルの使い方の練習。
最初は水に入るのがすっごく怖かった。
プールでも25メートル泳ぐのがやっとだし、海なんて毎年夏休みに波打ちぎわで遊ぶだけだもん。
マスクをつけると、なんだか息苦しい。
ダイビング用のマスクは鼻までぴったりと覆うようになっているので、当然ながら口で呼吸しなくちゃならないんだけど、なんせそういう呼吸に慣れてないから、なんだか窒息しそうな気がしてくる。
胸のあたりまでの深さの所に来ると、インストラクターの上田さんが頭まで水に浸かってみろと言う。
ひえ~と思いつつ、おそるおそる顔を水につける。
どきどき・・・。
耳まで水がきたとたん、半分パニックになってあわてて顔をあげちゃった。
これには自分でもびっくり。耳に水が入るのが予想以上に怖いんだよね。理屈ぬきにとにかく怖い!
おまけにその日は曇っていたうえに風が強くて水も冷たかった。
寒いよー怖いよーと思いつつ、午前中の講習はなんとか終了。
・・・ああ、前途多難。
それにしても・・・ここに来てからはじめて知ったんだけど、与那国でCカードを取る人間はかなり貴重な存在なんだそうです。理由は簡単。与那国の海は潮の流れがあったりして、どちらかというと上級者向けの海だからだって。どうりで講習で来たって言うたびに、他のダイバーたちがびっくりしていたわけだぁ。自分の無知と無謀さをあらためて実感しつつも、すでにあとの祭り。
思わずインストラクターの上田さんに、わたし本当に遺跡に潜れるようになります? と聞いたら、
「もちろん、なります」
という力強い答え。
さすがインストラクター! けっして生徒にプレッシャーをかけない。
それに「神々の指紋」や「神々の世界」などの著者グラハムハンコックも与那国海底遺跡を自分の目で確かめるために、ここ与那国島でCカードを取っているんだって、お客のダイバーのひとりが教えてくれた。
「キョーコさん、グラハムハンコックみたいじゃない。それに、ここでCカード取ったら、よそに行った時すごく楽に感じるから」
・・・そうか。そう考えればいいのか・・・。まあ、グラハムハンコックのほうは一緒にされちゃ迷惑かもしれないけど・・・。
イメージを味方につけろ
講習二日目の朝を迎えて、気分はブルー一色。
すでに前日の午後からシュノーケルをレギュレーターに変え、タンクを背負っての講習が始まっています。
なんでこんなにブルーかっていうと、ひとえに水が怖いうえに鼻を塞がれると窒息するような気がするからの二点。
でもこの日は風もなく、ピッカピカの快晴。
気分を立て直して今日もがんばるっ!
今日は昨日とは場所をかえて、港の一角にあるビーチ。
水深は午前午後とも最大で3メートルぐらいまで潜りました。きのうとはうって変わって、水深1.5メートルほどの場所でも色とりどりの熱帯魚がうろうろしてるのに感激!
あいかわらず恐怖心は完全には抜けないけど、いくらか水に慣れてきた感じがする。
そして講習三日目。
この日はいよいよボートダイビングです。
場所はダンヌ餌付けポイント。水深は最大6.2メートル。
これまでのビーチからのエントリーとは違って、船でダイブポイントまでゆき、そこからドボンと海に飛び込むスタイルです。
え~そんなことわたしにできるのぉ? と、内心うろたえていたのを見透かしたのか、
「だいじょうぶ。やることは基本的に今までと同じです」
という上田さんの無情なひと言。
どうしよう~緊張のせいか、心臓がバクバクしてきた。
だいじょうぶという上田さんの声に励まされ、しっかりとレギュレーターをくわえ、思いきって海に飛び込む。
BCにエアをいれ、いったん浮上。
ここからあらためてBCのエアを抜き、ゆっくりと潜行してゆきます。
水中は軽いうねりがあったけど、25メートルという透明度の良さ。海底はもちろん、ずっと向こうにあるさんご礁や魚たちの群れがくっきりと見える。
しだいに水中にいることに慣れてくると、ずいぶん呼吸が楽になってきた。上田さんのあとについて、ゆっくりと水中を移動します。
なかなか中性浮力がとれず、すぐに体が浮かんでいきそうになる(汗)。
でもとにかく、無事船まで戻ることができました。
午後は同じダンヌ餌付けポイントだけど、すこし深場・・・といっても最大で11.2メートルほどだけど。
この日の講習が終わって部屋に戻って考えた。
たしかに慣れてきてはいるけど、こんなんじゃ二日後にひかえた遺跡ポイントまで、とてもいけるとは思えない。なによりも水に対する極度の恐怖が抜けきらないのがキツイ。そこで、ふと思いついたのがイメージトレーニング。
イメージトレーニングっていうのはインナースペースファンタジーでも少し説明したけど、ようするになりたい自分のイメージを潜在意識にインプットする方法です。
さんざんお客さんにイメージトレーニングの効用を言っておいて、わたしが水が怖いなんて言っていたんじゃ、あまりにも情けないよなー。
というわけで、さっそく自分で試してみることにしました。これまでいろいろイメトレはしてきたつもりだったけど、こういう、ある意味で極限状態でのイメトレははじめて。
目をとじる・・・。
ゆっくりとした深い呼吸に切り替える。
水の中をゆったりと気持ち良さそうに泳いでいる自分をイメージする・・・うん・・・いい感じ・・・。写真で見た遺跡ポイントの上を穏やかに泳いでいる自分になりきっていく・・・すでに気分は部屋ではなく海の中・・・。レギュレーターをくわえ、楽に呼吸しているイメージ・・・実際に水中でしているつもりでゆっくりと吸って・・・・・・吐く・・・・・・吸って・・・・・・・吐く・・・・・・。
しだいに気持ちが穏やかに安定してくる。水の中は気持ちいい・・・。
時間にして20分ぐらいかな。いつのまにか、あれほど強烈な恐怖心とプレッシャーがなくなっていました。
たったこれだけと思うかもしれないけど、たったこれだけがとっても大きい。とくにダイビングはメンタルな要素の大きいスポーツだといいます。水中でトラブルが起きたとき、技術よりも精神状態が命に直結するからです。何か起こったときにパニックになってしまえば命を落とす危険性が高い。逆に、まずひと呼吸おいてから落ち着いて対処すれば、なんなくクリアできることも多いからです。
その意味では、わたしの心の中の過剰な恐怖心と、そこから発生するネガティブな精神状態を通常の精神状態に戻すことはダイビングを安全に楽しむうえでかなり効果が大きいはず。
ふつうはここでイメージトレーニングは終わるんだけど、じつは今回わたしが試してみた事はもうひとつありました。
海神、あるいは海の精霊たちをイメージしたんです。そしてかれらに心の中で伝えました。
明日・・・あなたたちの場所にお邪魔します。力をかしてください・・・と。
迷信などと笑ってはいけません(笑)。
たとえば知り合いの海人(沖縄の漁師のこと)は、今でも海に出るときは海の神々と祖霊に漁の安全と豊漁を祈ります。これだけで精神的にぐっと安定するんだと思う。そして自然に対する畏怖の思いと守られているという安心感があるから、いざという時に的確な状況判断ができる精神状態を保つことができるんじゃないかなあ。
さて講習四日目。
場所は前日と同じダンヌ餌付けポイントなんだけど、今日はドリフトダイビングです。
ドリフトというのは船からエントリーしたあと、潮の流れにのって水中を楽しみながら移動しつつ、エントリー地点とは別の場所で浮上します。そこで待っていると、船がダイバーを拾いにきます。もちろん浮上するエキジット地点はあらかじめ船のキャプテンと打ち合わせておくので海に取り残される心配はまずありません。
さてさてダイビングの結果はというと、技術面はともかく、精神面はバッチリでした。
前日までの恐怖とプレッシャーが嘘のように、とても安定した気持ちで潜ることができました。
あれほど苦しいと思っていたレギュレーターでの呼吸も楽になったし、なによりも海に抱かれているという感覚がとても強くて、本当に気持ちよかった。この日、はじめてゆっくりと海中を眺めたような気がします。
この日の夕方、Cカードの仮の認定書をもらいました!
ついにわたしもダイバーの仲間入り。
明日はいよいよ待望の海底遺跡に潜ります。
海底遺跡を手でさわる! 2003年1月19日
いよいよ今日は遺跡ポイントに潜ります。
天気はあいかわらず快晴!
すでにダイビングの面白さを感じはじめているキョーコとしてはワクワクドキドキ!
今日一緒に潜るのはわたしを含めて8人、それにガイドとアシストがつくので合計10人になります。
遺跡ポイントは最大でも水深17メートル、遺跡の上のほうはわずか水深4メートルほどしかありません。ただ流れが強くなるときがあるので要注意らしいんだけど、この日は思ったより流れが弱かったので初心者のわたしにはラッキーだったかな。
ところで、みなさんは与那国海底遺跡をご存じでしょうか?
与那国島沖の海底に古代ローマの都市を彷彿させるような地形があり、氷河性海面変動によって一万年以上も前に水没したのではないかと言われています。これが遺跡なのかそれとも自然の造詣によって作り出されたものなのかは、今現在確定されていません。これに関しては琉球大学の木村教授らが10年以上も精力的に調査を続けています。わたしが遺跡に興味をもったのは、木村教授の書いた「海底宮殿」という本を読んだのがきっかけでした。
もともと日本列島、琉球列島は陸橋によって大陸とつながっていたといいます。それがおよそ1万2000年ほど前の地殻変動により陸橋が沈み琉球列島の大半が水没して現在の地形になったといわれています。もしそうであれば、与那国島沖の遺跡が本物の遺跡であったとしても不思議ではないのかもしれませんよね。
さて、いよいよ遺跡ポイントにエントリー。
ドボンと海中に飛び込み、ゆっくりと潜行してゆきます。沈むのに時間がかかるのは、初心者ということで許してもらいましょう(笑)。
海底で他のダイバーたちと合流すると、ガイドの田島さんのオーケーをもらい遺跡に近づきます。
最初に目の前に現われたのは城門と言われるポイント。高さ160センチ、幅80センチ、奥行き3メートルほどのトンネルは巨石が積み重なっていて、なんとも不思議な気がしました。ここを抜けると向こう側にでられるらしいけど、さすがにそんな無謀なことはさせてくれません(笑)。壁に沿って浮上していくと、まもなく二枚の巨石が合わさっている二枚岩のポイント。
上を見上げると、遺跡のいちばん浅い部分に波が押し寄せるたびに、海面が暗くなるのが見えました。そして波が引くと、ぱぁーと明るくなる。
しばしその光景に見とれていると、Tさんがふたたび移動を始めた様子。
みんなのあとについていくと、次に現われたのはメインテラスと呼ばれる広場。そしてループ階段の上をゆらゆらと泳ぎ、水路や柱穴と呼ばれる丸い穴を眺め、亀のレリーフや拝所と呼ばれる深さ3メートルほどの大きな窪みを見ました。
どれをとってもそうなんだけど、全体的に石の形が、まるで切り出されたかのように四角いのがすごく印象的だった。
それから波動。
触ったり、手をかざしたりしてみたけど、遺跡から感じる波動はピラミッドのもつ波動に似てる気がしてしょうがない。
というわけで、わたしには自然物というより、やはり遺跡であるように思えました。
そうそう、遺跡を見てからエキジットポイントに向かう途中、本物の亀に会いました。こっちに向かって泳いでくるのを呆然と眺めていると、本当に目と鼻のさき20センチくらいのところまできて、すっと進路転換して、あっという間に泳いでいってしまったけど、もう感激!
その時は気づかなかったけど、あとで聞いたらわたしのところに来るようにみんなで亀を誘導してくれたんだって。
もう感謝です!
亀には迷惑だったかもしれないけど(苦笑)。
というわけで念願の遺跡に触り、Cカードも取得して無事帰ってきました。
今回すごく感じたのは、ダイビングって想像以上に自然の懐に入り込めるんだってことでした。海中で何もせず漂っている瞬間って、ちょうど瞑想してるときの感覚にすごく似ているなあと思います。
瞑想をはじめたばかりの時はいろいろ雑念が浮かんだり、なかなかうまくできないよね。ところが海の中では、瞑想中の心地よい浮遊感覚をすごく簡単に体験できるんだよね。
仲よくなったベテランダイバーのひとりが言っていたけど、海の中で漂っている時って地球と繋がっているような気がするって。その気持ちよくわかります。
これまで祈りや瞑想を実践してきたひとならなおのこと、海と一体になる感覚を知ることによって、祈りあるいは瞑想の感覚が深くなること間違いなしです。
それにしても、講習の最初の頃は何度挫折しかけたことか(笑)。
まだまだ自分も捨てたもんじゃないと思ったキョーコでした☆
というわけで、「16年前に視たある光景がわたしの人生を変えた③ 解放された、その先にあったのは」に続きます。
(つづく)
2019年4月25日
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16年前に視たある光景がわたしの人生を変えた③「解放された、その先にあったのは」
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