依存心と災害
先日八幡平に登ったときのこと。
ちょうど昼食時で休憩していると、すぐとなりに座っていた年配のご夫婦が熱いコーヒーを御馳走してくれた。
目の前に広がる八幡沼はすでに秋の気配がただよっている。
登山者どうしの親しみから、いろいろ話しているうちに、東日本大震災の話になった。
「あのとき、自分たちは陸前高田にいてね」
「え・・・」
私は思わず息をのんだ。
考えてみれば、ここ岩手県は大きな被害を受けた地域のひとつだった。
ご主人の話によると、その日は二人とも陸前高田の自宅にいた。
揺れがおさまった直後、すぐに避難を開始した。
指定の避難所では津波がきたらアウトだと思って、避難所と反対方向の高台に避難した。
この間およそ20分弱。地震発生直後の陸前高田の町は避難する気配のない人が大勢いたという。
「堤防があったから津波到着が10分遅れたというひともいるけど、堤防があって、安心しきっていたから避難が10分遅れたんだ」
高台にたどり着き、眼下の町を振り返ると、最初は平穏だった風景がやがて津波の飲み込まれて、最後には何もなくなったという。
一連の流れをデジカメで撮ったというので、その写真を見せてもらった。
絶句だった。
震災発生10分後くらいの写真には、車が海のほうに向かって走っていたり、普通にひとが歩いているのが映っている。
ご主人によると、3/9の地震の時もそうだったが、3/11も津波を予測して即行動を開始したひとは少なかったのだそうだ。
「俺が言いたいのは、地震がきたらテレビなんか見ていたらだめだ。そんなのは避難してから見ればいい。自分で状況判断して、行動しないと」
別れ際、ご主人は熱い口調でそう言った。
ご主人の話を聞いて、震災直後のフクイチの爆発の直後、都内在住の知り合いがもらした言葉を思い出した。
「周囲が動かないから自分も動かない、国が危険だと言ってくれないから逃げることができない」と。
あの時、政府は放射能漏れに関して「ただちに健康に問題はありません」と言い続けた。
二か月を過ぎた頃に、真実がわかり、当時都内にいた多くの人たちが被曝した。
不可抗力もあるけれど、それでも地震に限らずすべてにおいて、テレビや他者の判断に任せてはだめなんだよね。
自分自身で人生の責任を取ることなく、周囲のせいにしつづける「依存心」こそが、現在この国で起きている問題の本質なんだよね。
すくなくともこのご夫婦には依存心のかけらもなかった。
彼らは自分たちの力で運を切り拓いたんだろう。
ここに重要な鍵がある。
「社会構造は変えることはできない」
「国は絶対の存在だ」
「不満を感じても我慢をするのが美徳」
「周囲のひとを不快にしてはいけない」
「自分を犠牲にしても周囲の期待に応えなければいけない」
といった思い込みが、もし自分の中にあるなら、自分自身に対して、こう質問してみるといい。
「それは、ほんとうに事実だろうか？ その根拠は何？」
・・・・・と。
シャーマン的な視点でいうなら、肉体は神さま、あるいは宇宙からあずかった「預かり物」なんだよね。だから生きる努力をしないということは、宇宙的な視点でみると傲慢な行為そのものに映る。
自分だけではなく、愛する人たちと力を合わせて、それぞれの与えられた命を全うできるように努力することが、人間に与えられた唯一の使命だといえるかもしれない。
自分と自分にとって大切なひとたちが喜びをもってその命を全うするためには、彼らの友人やその親といった、かかわりのあるすべての人の幸せを視野に入れて考える必要があるよね。
そして精一杯生きる努力をして、力尽きたのであれば、それが天寿を全うしたということなのだろう。
そんな視点にたったうえで、本当になすすべがないのか、もういちど考えてみるといい。
いま、わたしたち人間が問われているのは、怠惰と依存心から脱却し、自立した本当のおとなになることなんだよね。
そこに気づき、具体的に行動するまで、このさき幾度となく自然災害は訪れるだろう。
あなたはあなたが思っているよりも、ずっと大きな力を持っている。
ただそうした力を「依存心」という重石で抑え込んでいるだけに過ぎない。
最初からあなたはこの状況を打開する力、大切な人たちを守る力を持っている。
あなたはもうとっくにそれに気づいていたよね？
2011年9月29日
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Comment
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地震と経済について、この先のもう少し具体的な予測を教えていただきたいです。
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ごりらさん こんばんは。 申しわけないのですが、これが公開できる限界です。
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キョーコさんこんばんは。 今回の記事を読んで涙がこみあげて来ました。悲しみやうれし涙でもない、自分の心の底からこみあげてくる思いの涙かな…私は私と私の愛する人達を守って生きたい。主人も同じ気持ちでいます。 最近、主人の周りで色々な変化がありました。とても不安な変化です。 私達はとても不安でその不安に押しつぶされそうだったけど、今は不安を抱きしめて、未来に向かって少しうきうきしている２人がいます。 こんな状況でうきうきしている私達です。これには私達自身がびっくりです。しかも主人の顔つきがすごく変わり、何も知らない友人に「すごく精悍になった」と言われました。（つまり、今迄は精悍ではなかったということかな？…笑） 主人と私はチーム、共通認識をもってそれぞれの人生を生きたい。そして、２人がそれぞれの人生を生きれるのであれば、２人で寄り添って生きていけると思っています。更に、２人がいいチームであれば、それはきっと周りの人をも動かす大きな力となって行き、建設的なコミュニティが形成でき、そのコミュニティは広がっていく。私達はそう信じています。 PS 今日は新卒の時の会社の先輩達と飲み会でした。 コミュニティ構想はちゃくちゃくと進んでいます。
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柴犬さん おはようございます。 週末は被曝ヒーリング勉強会等でバタバタして、今日は久しぶりのオフです。 そうでしたか。ご主人も柴犬さんもいい感じですね。 その気持ちこそが状況をきりひらくカギになりますよね。 人生は一瞬の舞台。 私たちはシナリオライターであり、役者であり、観客でもあります。 素敵な伴侶が一緒にいてくれるなら、より一層舞台に深みを増してくれるのだろうと思います。