親の覚悟
つい先日、娘の中学校の三者面談があった。
担任の先生と娘とわたしの三人で、和やかに面談が始まった。
じつは面談の数日前の夕方、娘とふたり遅いおやつを食べていたときのこと。
「ねえ、お母さん。クラスの○○君がいやだって言っているのに、いつもひとの頭を何度も叩くんだよ」
娘はめずらしく深刻な顔をしている。
「もしかして、これっていじめられているのかなあ?」
「どうしてそう思うの?」
「う~ん・・・・向こうはふざけているだけだと思うんだけど、痛いし、やめてって言ってもやめないし」
「いやだって言っているのに?」
「うん。・・・・死ねって気持ちになる」
「・・・そうか。口で言ってもやめないのか。叩かれているあいだ、どうしているの?」
「手をこうやって・・・・」
「あのね、口で言ってもやめないんでしょ? お母さんが○○君の家に電話してもいいんだけど、どうする?」
「いい」
「じゃ、どうしたい?」
「・・・・」
「だったらグーで殴ってやり返したらいいんじゃない? ○○君は悪気はないのはわかるけど、叩かれっぱなしはいやでしょ?」
「・・・でも、先生に怒られる」
「わかった。もし殴ったことで先生が文句言ってきたら、わたしが話をつけるから、親に電話するように言いなさい」
とまあ、こんなやり取りがあったんだよね。
面談がすすみ、この話になった。
「口で言っても叩くのをやめないなら、娘には実力行使にでろと言ってありますから」
「いや待ってください。お母さん。それでもし相手の子が怪我をしたら大変です」
・・・・叩かれているのはうちの娘なんだよと思いつつ、
「状況をわかっていますか? 日本では正当防衛は過剰防衛として被害者が裁かれることが多いと聞きますが、それはつまり自分の身を守ることを放棄せよということですかね?」
「お母さん、落ち着いて」と娘。
「そうじゃないですけど、まずやることをやってから・・・・」と先生。
「先生の立場はわかります。そう言うしかないですよね。けれどわたしは親ですから立場が違います」
「そうですね。自分の子供になら、きっと同じことを言うと思います・・・・」
「判断は娘にまかせますが、状況によっては暴力も辞さないというのは、親のわたしが許可しましたから、なにかあればご連絡ください」
こんな会話で最後は和やかに終わった。
学校の先生もたいへんなんだよね。厳しい管理体制のなかで、仕事は多い、ストレスも多い。だから先生に多くを求めるのは酷だとも思う。ましてうちの娘の話はまだ軽いほうで、深刻なケースはたくさんある。
だけど親として、見過ごすわけにはいかないんだよね。それなりの覚悟があることを学校側に伝えることで、娘に伝えたいものがある。
帰り道、自転車をひきつつ、娘とふたりで夕焼けの空を見ながら歩いた。
「先生、困っていたね」
「うん。でも先生は心配性だからしかたないよ」
先生の立場とか性格は娘のほうがよくわかっているらしい。
「先生、今夜は眠れないかもしれない」
そう言った娘の顔をちらっと見ると、妙に晴れ晴れとした顔をしていた。
後日娘から聞いた話によると、やり返したわけでもないのに、なにが変わったんだか、このところ○○君とうまくいっているらしい。
ひとまず一段落かな。
2006年12月11日
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Comment
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「やられたら絶対にやり返してやる」という固い決心が相手にも伝わるんじゃないでしょうか。 覚悟というか殺気というかそういう「気」みたいなものが伝わると思います。
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ちょっとだけ昔を思い出しましたw あの頃、その覚悟?一分?があれば、乗り切るのにそれほど時間はかからなかったのかなー、と今思います。 まー今更ですけどね^^; 何だか、ほんわかした気分になりました(^_^)
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キョーコさんはいつでも娘さんの味方なんですね。 「じゃあ、どうしたい?」「判断は娘に任せます」 って言えるお母さんって素敵です。 キョーコさんは娘さんを一人の人間として尊重されているのですね。 私もキョーコさん見たいなお母さんになりたいです。 いい背中をみせてもらいました、ありがとうございます(^^♪
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いや~パチパチです。担任の先生にもかな? お堅いカトリックの学校に通ってましたが、体裁ばかりを考えた学園生活でした。悲しすぎました。 皆が一番慕っていた、若い女の先生が自殺された時も、9才だった私達には、一切説明も無く変だ!って思ってた私達は、シスター達に反抗という行動に出たが、あえなく制圧。撃沈でした。でも、私の母だけは子供達の味方 でしたが、どうもそれ以来、私達親子は危険人物と学校側に見なされた感は有りました・・・なぜ、あういう系統の学校はそういう問題には、人も事柄も排除方針なのでしょうね?学校の名誉?今もそうなのかな?と、30年も前の体制の話。今はそうでないと願いたいな。
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あまり論じられませんが、「いじめ自殺」問題の本質は「親・周囲の無関心」だと私は思っています。 「いじめ→いじめに絶望→自殺」ではなく 「いじめ→(周囲・親の)助けがない→孤独・自己疎外感・見捨てられ感→絶望・自己存在否定→自殺」 なのではないでしょうか? 「親が全力で守る(価値が自分にはある)」という、自己存在への確信・肯定があれば自ら命を絶つということもないような気がします(もちろんそれが原因の全てではありませんが。) 「いじめ」は自殺の単なるトリガーにすぎないのかもしれません。 更に、いじめる側の動機は、実は自分の「自己存在の不確かさ」を確かめたいのかも知れません(もちろん子供にはそれを言語化・意識化できませんが。)そもそも、いじめる側の親子関係が確かなものであればいじめることもないでしょうから。
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通りすがりさん そうですね。 わたしも娘の覚悟が相手に伝わったのかなと思っています。
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monchiさん なんだか気持ちがわかるような気がします。 おとなになって振り返ると、あの頃もっと上手く伝えることができたらとか、ふと思い出すときがありますね。 でもそのときは子供なりに精一杯だったんですよねえ。。。。
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柴犬さん >キョーコさんは娘さんを一人の人間として尊重されているのですね。 そうですね。 親子げんかをするときもありますが^^; ただトラブルは成長するうえで必要不可欠なものなので、子供が自分で解決法を考える機会を奪わないように、というのは気をつけています。
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穂っです さん 9才のとき、慕っていた先生が自殺されたのは子供心に大きなショックだっただろうとお察しします。 気持ちを表現するには反抗という手段が精一杯だったのも年齢を考えるとうなずけます。 カトリックの学校は規制や規則がとくに厳しいのでしょうか。公立だったのでわかりませんが、ときどきそんな話を聞きます。
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ウォッチャーさん >「いじめ自殺」問題の本質は「親・周囲の無関心」だと私は思っています。 非常に本質をついていると思います。 そうですね。無関心なのか、あるいは親の側が精神的に成熟していないため子供の痛みを受け止めきれずに、子供をさらに追い込むような言動をしてしまう場合もあるかもしれません。 自分の価値が実感できれば、子供もおとなも自殺なんかしないと思うんです。 本当は親が日々の生活の中でそれを伝えてゆければいいんですが、親も心が病んでいるところに、現代社会の大きな問題があるのだと思います。 その意味では子供の自殺を防ぎたいなら、その親たちの心のケアが急務といえるかもしれません。
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いじめてる子は自分のやってることがいじめだと思っていない場合も多いのかもしれません。遊び半分で、叩いているのかも… 本来は親が厳しく怒ればいいのですが、お母さん一人で子供のしつけは大変です。 戦後の日本の政策自体が、ともかく貧しさから脱却できるようにと経済の成長に力をいれてすぎて父親は仕事でがんじがらめ。国のあり方自体が子育てや教育には手を抜いてきた、つけだと思います。
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イジメや自殺や少子化は、人類が多くなり過ぎたたので減らすために自分達の本能に基づいて行われているのではないか?と、常に感じています。
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こんにちは。 我が家でもありましたよ、男の子と。下の娘が小学校の時かな。 小さいことだけど、これ以上いくと良くないと判断。 事実を確かめるべく、他の男の子の居る友人宅へ電話したら、やっぱりそんな感じだと分かったんですが、その教えてくれた子達が「なんで見とって何にもしなかったか!!」と親達から叱られたそうで・・・気の毒・・・と思いつつ、感謝でした。 当の男の子は先生からこってり絞られたそうな。 それからは、家の娘もその子とも仲良くしてましたよ。
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つづき 上の娘は、小学校の間3回学校へ行きたくないと言いました。 低学年の時、しっかり膝に抱いて話を聞きました。 一日だけ休ませました。 中学年の時、しっかり話を聞きました。 休まず行きました。 高学年の時、悩んだ顔をしてましたが、中身は話してきませんでした。 「お母さんが聞かなくても大丈夫?友だちと解決できる?」と訊くと、 「うん」と頷きました。 絵に描いたように分かりやすい成長振りでしょ。 私はこの娘が生まれた時、「最初と最後の理解者になろう」と理由もなく思ったのでした。 私は怒ると鬼のような母でして、決して過保護じゃないですよ。ただ、「おかしい」と感じるアンテナだけはピンと立てていたいと思っています。 だけど、これも自分が自分らしく生きていないと、下向いてるから、子どもが電波出しまくってても感受できないんですよね。受信圏外に自分がいるんですよね。
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>キョーコさん 「無関心」よりも広い範疇で「未成熟」というほうが適切なような気がします。恐らく、一部の親は子供や世事(いじめ等)にどう接してよいのか分からないのでしょう。 そして、たいがい、その原因は更にその親の親子関係にあったりしますから、やっぱり親たちの心のケアや教育が重要になりますね。 (ただ、それは困難な仕事なのでしょうね・・・。) 自殺というのは、いじめた相手だけでなく、周囲への「抗議」のように思えてなりません。 病的なケースを除き、最悪の条件が重なると「子供の自殺」となるのでしょうが、いずれにせよ自殺防止には親へのケアが最重要でしょう。
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さくらこさん >いじめてる子は自分のやってることがいじめだと思っていない場合も多いのかもしれません。遊び半分で、叩いているのかも… それは圧倒的に多いかも・・・・。 >お母さん一人で子供のしつけは大変です。 そうなんですよね。 とくに子供が小さいときは精神的に本当にきつい。 ここで夫側の精神的なバックアップがあるかどうかで、母子関係が大きく変わってきます。 忙しい体に鞭打って家事・育児を分担するよりも、子育てでストレスがたまっている妻に「いつもありがとう」という気持ちを伝えるだけで、ぜんぜん精神的負担が違うのになあと思います。
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R.F. さん 鋭い意見ですね。 思わずドキッとしました。 そうですね。レミングなどの動物は一定数に達すると、そうやって数を調整しますね。 ただわたしは人間の内側にある霊性は動物的な本能を越える力があると信じたいです。
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テレサさん やっぱりどこのうちも同じですね。 一難去って、また一難というか(苦笑)。 でも何の問題もなく育つのがいいわけじゃないしね。 いい意味で、お子さん方は転ぶべきところで転んで、生きるために必要なスキルを身につけていますよね。 >これも自分が自分らしく生きていないと、下向いてるから、子どもが電波出しまくってても感受できないんですよね。受信圏外に自分がいるんですよね。 同感です。 最終的には、エゴではなく、本当の意味で親が自分らしく生きるに尽きますね。
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ウォッチャーさん >自殺というのは、いじめた相手だけでなく、周囲への「抗議」のように思えてなりません。 う~ん・・・かれらの気持ちを思うとつらいものがありますね。 つねづね思うのですが、カウンセリングルームに来る方たちはまだ心配ないんですよ。 本当に心配なのは、潜在的に心のケアの必要性を抱えている方たちです。 かれらをどうすれば手助けしてゆけるか? そのあたりが地域の連携や活性化、子育て支援など、これからの日本のキーワードになると思います。
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>人類が多くなり過ぎたたので減らすために自分達の本能に基づいて行われているのではないか 生物学的に考えれば、ある意味ですっごく自然なことなんですよね。 ただ、わたしも、キョーコさんと同じ思いでいます。