自己達成予言を打ち破れ
先日何人かの方から未来予知についての見解を聞かせてほしいという内容のメールをもらった。そういえば最近は終末予言やら日本悲観的な未来の話をよく耳にする。
というわけで、今日は未来予知についての個人的見解。
唐突だけど自己達成予言という言葉を知っているだろうか？
これは心理学用語で、言葉というのは思った以上に強い拘束力をもつんだよね。だめだと思えば本当にだめになるし、うまくいくと思えば現実がその方向に動く。この思い込みのことを自己達成予言Self-fulfilling Prophecyというんだよね。
以前パンドラはふりむかないという記事でで『パンドラの箱』について書いたものがあったよね。これはもともとギリシャ神話のひとつで、ご存知のとおりパンドラという女性が開けてはいけないと言われている箱を開けてしまう話だよね。
箱をあけた瞬間、もろもろの災いが飛び出してしまうんだけど、唯一箱の中に残っていたのは『希望』だと書かれることが多いし、わたしの過去記事でも希望と書いた。でも正しくは『未来をすべてわかってしまう災い』が残った、なんだよね。だからこそ人類は希望を失わずにすんだ。そこから拡大解釈して希望が残ったという図式になる。
そもそもなぜ未来のすべてがわかることが災いなのか？
解釈はふたつある。
ひとつは人類の未来が悲惨そのものだからという解釈。
たとえば１年後に人類が滅ぶとわかっていたら、そしてそれはどんな努力でも覆せない決定的なものだとしたら、人類の90パーセント以上は生きる望みをなくすよね。
ここに終末論的な教義をもった宗教が絡めば、魂を磨いて弥勒の世を待ちましょうだの、特別な修行をして生き残り組みになりましょうといった論法で信者を拡大してゆくんだろうな。
もうひとつの解釈は、未来がわかることで人間は努力をしなくなるというのがそれ。
たとえば行きたい学校に絶対に合格するとわかっていたら、ひとによっては気持ちが緩んで勉強がおろそかになるかもしれない。あるいは出会ったばかりのひとが将来の結婚相手だと最初からわかっていたら、お互いの絆を深めてゆくうえで必要な葛藤や、それによってもたらされる精神的な成長の機会を失ってしまうかもしれない。逆に最初から行きたい学校には受からないと知っていたら、その時点であきらめてしまうことのほうが多いよね。
ようするに未来がわかってしまうと、人間は無駄な努力はしなくなる。良い結果だけをもとめて生きようとすれば、人間的なスケールも開花するはずの潜在的な能力も発揮できなくなる。
多くの人間は未来を知らないからこそ葛藤や不安を感じるし、それと向き合うことによって、より深い人生の醍醐味を知ってゆく。もしも表面の上澄みだけをすくって生きるなら、結果的にそのひとの人生は薄っぺらなものになってしまうよね。そんな理由で絶対的な未来を知る力を封印されているのだとしたら、ギリシャ神話の作者はなかなか人間をよく知っていると思う。
じゃシャーマンの未来視や聖書をはじめとした預言書などに書かれている予言の本質はなにかという話になってくる。
それは遊びの部分を残した変更可能な選択肢のひとつだと考えるといい。
各種予言であれ、日々刻々と移り変わる時事ニュースであれ、情報という意味においては同じなんだよね。
大事なのはそれをどう取り扱うかってこと。
人類が滅びる的な終末予言は多々あるけど、やっぱり有名なのは聖書の黙示録、ホピあたりかな。日本人はほんとにブランドモノに弱い（笑）。
一部の聖書予言信者に言わせると、予言のとおりに世の中は進んでいるらしい。もっともこれについては嘘かほんとか知らないけれど、欧米の一部勢力は聖書の黙示録の世界を実現させるために活動しているから、聖書のシナリオどおりに進んでいくのも当然だという説もある。こうした陰謀説はともかく、聖書ですら終末論的な読み方をすれば、即座にマイナスの自己達成予言になってしまう。
問題はこうした自己達成予言を信じることによって、現実をそのとおりにもっていく力が発動してしまうことなんだよね。
これは予言よりもこわい。
日々流れているニュースも同じ。あくまで情報のひとつとしてとらえるのなら何の問題もない。でも「なんとなく世の中が悪い方向に向かっているような気がする」とか、｢どうせ庶民には何もできない」といった受動的・反応的な受け止め方をしてしまえば、テレビから流れるあらゆるニュースは自己達成予言となって現実化に向かうんだよね。
自己達成予言のこわいところは、その考え方になんの根拠もなかったとしても、それを実現させるために、無意識に予言を裏付ける行動をとってしまうところなんだよね。これに自己達成予言と矛盾する事実には目を向けないという視野の狭さが加わるんだから手に負えない。
たとえば四年後に不況がくるなどというニュースが広まれば、それに対して身構えるし、財布の紐もかたくなるから、結果的にもっと早く不況になってしまう。
一般的な占いもそうで、あなたはこんな性格ですと言われて、当たらずしも遠からずだったりすると、なんとなくその気になってしまうこともよくあるよね。すると占いマジックが発動する。つまり無意識に自分をその型に当てはめようとして行動するわけ。あるいは、あなたはこういう性格よねと周囲から言われ続けているうちに、本人もいつしか無意識に自分はそういう性格なんだと思い込んで、そのように行動してしまうんだよね。
それどころか積極的にこうした予測や予言を悪用すれば、現実を思い通りに動かすこともできるんだよね。
つまり情報操作ってやつだね。
じゃどうしたらいいのか？
それは自己達成予言の枠の外にでること。
ニュースにしろ、予言にしろ、鵜呑みにするのではなく、数ある情報の中のひとつだと捉えることが必要だと思う。厳しい現実を突きつけられて希望を失うのでもなく、現実逃避と妄信に身をゆだねるのでもない。
現実を直視したうえで、望む未来が実現するために行動すること。人智を尽くして天命を待つってやつだね。
それがマイナスの自己達成予言を打ち破る力になるよ。
２００６年４月１７日
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Comment
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自己達成予言の外に出ること！ 朝から響きました～（＞＜）「できることからこつこつと」 西川きよしの一言が浮かびました。。。
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私、某霊能者から『２年後に他界するかも？』と予言されております。今年に入り、ここまでは予言通りにことが進んでおります。ここでビビったら御陀仏です。あくまでも『他界するかも？』なので、まだまだ５年先１０年先、もっと先も生きてるよ♪
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言葉を発すると、自分の耳に入り、それが脳に伝わり、潜在意識となる。 無意識の内に、その言葉通りに行動する。 天にむかってつばを吐くと、自分に返ってくると言うのと同じですね。 日本は言上げをあまりしない国と言うのと、関係あります？
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初めまして 今まさに、無職になったばかりで。 マイナスの気持ちに陥るのをなんとかくい止めている状態！ あまりいらん情報には耳を傾けないようにしています もっとクールに！
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金融庁は５日、三菱東京ＵＦＪ銀行で約９６万人分の顧客情報紛失が判明したのを受け、問題発生の経緯や情報管理体制について銀行法に基づく報告を命じる検討に入った。メガバンクとしては過去最大規模の個人情報紛失が起きたことを重視し、内部管理体制に問題がないか確認する必要があると判断した（１０月６日、時事通信社より）。
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今宵は仲秋の名月ですが残念でしたね。 ６年程前、友人が日本経済の将来を悲観して、円をドル・ユーロ・金に換え、真剣に日本脱出を考えていました。 不安が昂じて眠れなくなり、睡眠薬を処方してもらっている程の状態でした。 かくいう私も怖れと不安と隣り合わせの日々を過ごしていました。勿体無かったなと思います。 これから激動の時代を迎えていきますが 必要以上に囚われることなく、楽しくいきいきと自分自身を生きていきたいものです。 と言いながら、キョーコさんには、私の揺れる想いが映っているのでしょうね。（笑）
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michiさん >「できることからこつこつと」 うん。それに尽きるね♪
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ねねこさん >日本は言上げをあまりしない国と言うのと、関係あります？ そうですねえ。 自己達成予言は、 1 潜在意識にある心の癖＝自動思考パターン 2 言葉による刷り込み＝言霊の力 のふたつの力が合わさったものです。 日本人は無意識のうちに、2の言霊には現実を変える力がある信じているんですよね。 国会討論を見ていてもそうなんですが、最悪の事態を想定してのシュミレーションそのものに強い抵抗を示すのも、言霊信仰と無縁じゃないと思います。 問題は潜在意識と言葉のギャップなんですよね。いくらきれいごとを言ったり、言上げしなくても、潜在意識の中にある恐怖や不安が強ければ、そちらのほうが言霊以上に強く現実に働きかけてしまいます。 だから自己達成予言をプラスの形で作ることができれば、言霊の力とともに現実を変える力強いツールになると思います。
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与太郎さん はじめまして。 そうですね。ピンチは最大のチャンスともいいますしね。 健闘を祈っています。
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川嶋聡史 さん 書き込みありがとうございます。
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一度だけ・・・ さん 日本の未来を悲観していらっしゃる方は多いですね。 でも正直、わたしは不思議でしかたがないんです。 なぜ逃げるという発想ではなく、自分たちの手で状況を変えようとは思わないのでしょう。 祖父やそのまた祖父がどんな思いで私たちの世代に命を引き継いでくれたのかを思えば、わたしは何があってもこの国を捨てることなどできないです。 そしていつか子どもたちがこの国に生まれたことを誇りに思えるような精神や文化を伝えてゆきたいと思っています。 あ、わたしの精神論になっちゃいましたね。
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Mizuki Vincentさん こんばんは。 ちょっとした手違いで、お返事が後になってすいません（滝汗）。 某霊能者様よりも、わたしもMizukiさんの魂の力と潜在能力のほうを信じます。 勝手に戦友だと思っていますから（笑）。 おたがいにしっかり生き抜いて、世の中の流れを見届けましょうね！
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キョーコさんは歯痒いのでしょうね。 ＞なぜ逃げるという発想ではなく、自分たちの手で状況を変えようとは思わないのでしょう。 「この閉塞した状況がいつ迄続くのだろう。」「これから世の中はどうなってしまうのだろう。」等々 不安や恐怖の方が強く、希望や夢が見出せないのでしょう。 辛い時は本当に辛いですし、ぎりぎりの精神状態で日々を過ごしている時もありますから 「逃げたいな。」という気持ちも致仕方がないかもしれません。 上記の友人は、程に企業や何かしらのバックアップ無しに、個人が海外で生きていくことは無理と判断し 日本脱出を諦め腹を括って、地に足をつけて、着実に「おばさん」に進化している様です。
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私も大和」は大好きです。 安倍総理ではありません「が、大和ほど美しい国はないと思っています。 アインシュタインも「日本という国を存在させてくれて、神に感謝する。」という様な事を書き記しています。 「未来は自分で創り上げる事ができる。」と信じて、人智を尽くして天命を待つですね。 余談ですが、私も中丸薫さんの著書は読んだことはありませんが、もっと奥深く書かれた海外の著書があるそうです。 題名も教えてもらいましたが、忘れてしまいました。（私の場合は、君子危うきに近寄らずですので。） 北岡さんでしたらご存知ではありませんか？興味がありましたら一読されて下さい。
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一度だけ・・・ さん 歯がゆいのではなく、ひとりでも多くの方に現状を打開する方法はあるんだよということに気づいてほしいと思っています。 いまの日本人の置かれた状態というのは、敗戦トラウマが大きく関係しているので、単純に個人の心の問題だけではありません。 社会的な環境整備と同時に、ひとりひとりが自分自身の内面と向き合ってゆくこと。内部環境と外部環境の両方を変えてゆく必要があると感じています。 いろんな方がそれぞれの方法でこうした取り組みをはじめています。その中でわたしにできることはプロの心理カウンセラーとして、個人セッションを通して地道に人間を育ててゆくこと、そしてブログやＨＰを通して情報を発信してゆくことだと思っています。
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本の件、ありがとうございます。
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どーもです(^_^) 自己達成予言、生活に取り入れていこう（今まで以上に）としている今日この頃（？）です >敗戦トラウマが大きく関係している ここを読んでちとびつくりしてしまいました^^; 半世紀以上経ってるのに、ですか。 知らんかったー。
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monchiさん 戦後トラウマに関しては考え方は人それぞれなので、あくまで私見ですが。 コメント欄では書ききれないので、参考に戦後トラウマを扱った記事をあげときますね。 うちのブログの過去ログなら、05年1/22の｢根のない国～戦後日本を思うとき～」 05年6月18日以前の記事は05年6月の過去ログにはいっているのでそこからでも見れます。 http://lutera.org/archives/25610947.html こちらはオフィスマツナガさんのところで掲載していただいた「日本人のメンタリティー」 http://officematsunaga.livedoor.biz/archives/24868740.html
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どーもです。 >根のない国 読みました(^_^) 言っていること、わかりました。 ありがとーございました。
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monchiさん どういたしまして。