天職
「自分の本当にやりたいことがなんとなくわかってきたけど、それがまだ形にならない」
つい先日のこと。
わたしよりずいぶん年若い友人が言った。
うん。最近、お客様からも似たような話を聞くね。やりたいことがわからない。あるいはそれが自分にとって天職なのかどうかわからない。
彼女の話を聞きながら、もうずいぶん昔のことを思い出した。
あれはわたしがまだ34のときだった。
ある日突然、物語が書きたいと思った。
居ても立ってもいられない激しい情熱に突き動かされるまま、わたしは物語を書き始めた。
なぜこんなに書きたいのかわからない。
ありありと浮かんでくる情景と、その向こうにある形にならない何かを形にしたくて、ひたすら書いた。
物語が完成したとき、はじめて誰かに読んで欲しいと思った。
それが小説家になりたいという夢に変わるのにそれほど時間はかからなかった。
その頃わたしは心理カウンセリングと占いの仕事を半々ぐらいの割合でやっていたんだよね。
こっちは言ってみれば生活のための仕事ってやつで、いつか小説で食べていけるようになりたいと本気で思っていたんだよね。
そんなある日、占い師仲間でもある友人から電話がかかってきた。
「もしもし~じつはさ」
電話のむこうで友人が切り出した。
こいつがもってくる話はいつもロクなもんじゃないんだよなあ。
「なに? また変な話じゃないだろうね」
「今回はこないだほどヤバい話じゃないって。じつはさ、友人がどうも何かに憑かれているみたいなんだ」
・・・・やっぱり(^^;
「それで祓ってくれないかなと」
・・・おまえなあ。
話を聞いてみると、どうも彼の親しい友人のひとりであるA氏のまわりで、このところ奇妙な事ばかり起きているらしい。
「飲み屋をでて、狭い階段を下りると、いきなりくもの巣みたいなものが降りかかってきたり、部屋の電気が着いたり消えたりとかさ。とにかくへんなんだよ」
「その程度じゃなあ。で、いまA氏はどこにいるの?」
「それが、昨日から沖縄に行ってる」
「沖縄?」
その言葉が妙に引っかかった。
当時、沖縄なんてわたしは行ったこともなければ興味もなかった。
「ふうん・・・いちおう視てみるけど」
さっそく霊視すると、A氏の肩のあたりにしっかり13世紀頃の琉球王国の衣装を身に着けた若い女の子がのっかっていた。いつもなら、ここで瞬時に浄霊して終わりなんだけど、このときはふと彼女と話がしてみたくなったんだよね。
話してみると、幽霊ながらもとてもピュアな心をもった女の子。
で、だ。
つい言ってしまった。
「物語にして欲しいんだね。約束するから」
言ってしまったが運の尽き。
それから一ヵ月後、わたしは幽霊の取材をするために沖縄行きの飛行機の中にいた。一年に一作のペースで書いて、これが四作目。無謀にも某大手出版社の編集長に作品を読んでくれと手紙を書いたら快く引き受けてくれたし、未来はばら色の作家生活・・・のはずだった。
ところがこの頃からすこしずつ将来の予定が狂いはじめた。
沖縄から帰ってきてすぐに編集長との約束があって、とある喫茶店で会ったんだよね。覚悟はしていたけど、前作に関してありがたくも頭が真っ白になるほど厳しいアドバイスをいただいた。幽霊の女の子の話は一ヶ月で書き上げて、彼女も無事成仏したものの問題はそんなことじゃなかった。
「最初の50ページを読めば結末がわかる。文学的な表現ならこの構成でもいいけど、君の文体はエンターティメント向きだしね。それと、舞台を沖縄に絞ったほうがいい」
次を書くしかなかった。
このとき浮かんだのがなぜか宮古島。
理由はない。
そして宮古島に行ったときから、本格的にシャーマンとしての人生が動き始めてしまった。いま考えると、沖縄の幽霊はもちろん、なにもかもがシャーマンの道を歩くために計画されていたんだよね。
宮古から帰ってきてすぐ物語を書き上げた。
そしてそれを最後に、いつも胸の奥にあった書くことに対する気持ちが跡形もなく消えてしまったんだよね。ラジオの仕事も占い・心理カウンセリングの仕事も休業して、書くための時間を作ったこともあった。あれほど夢中になれるものはなかったし、書くことはわたしにとってすべてだった。
けれどその気持ちそのものが消えてしまったんだから仕方がない。物語を書くことは、わたしにとってはこの場所にたどりつくための通過点だったんだろう。それがなんであれ、本気で取り組まなきゃ道は開けなかったんだよね。
夢は消えていった。
そして新しい道が目の前にあった。
もちろんシャーマンに関しては最初はかなり抵抗した。
だってわたしは作品とか、そういった形で表現することが好きだし、ずっとそうしたものに関わって生きてゆきたいという気持があった。
やりたいことは? と聞かれたら、いまは音楽って答えるかな。やっぱり何かを表現することなんだよね。けれどそれは私事にちかいかもしれない。
ひとくちにシャーマンといってもいろんな種類があるけれど、わたしの場合は自然や大地の精霊たちから直接依頼を受けた場合のみ動く。当然、物質的・三次元的な見返りはない。たとえば作品を書くことで現実社会で評価されるとか、そういったこととは無縁なんだよね。わたしがこれまで望んできたことは情熱から発していたけれど、自然の精霊たちとの交流はその対極にある無私なんだよね。もっともたまにブログネタにしてるけど、ま、そのぐらいいいか(笑)。
これまでわがままも通したし、エゴで動いてきたこともたくさんある。成功の心地よさも、挫折や屈辱で眠れない夜も知っている。もうじゅうぶん納得するほど好きなことをやってきた。
そう思ったとき、わたしはシャーマンであることを受け入れた。
ワクワクとは無縁だし、望んでいたものとはまったく違うけど、やるしかないかってな具合に腹をくくったのもある。けれどいちばん大きかったのは、自分のちいさなエゴのためではなく、ただ淡々と役割をこなすことが自分の天命なのだと気づいたからだった。そしてそれが魂としての自分が本当に望んだ道だったのだと、そのとき気づいたんだよね。
やりたいことを見つけられるひとは、それだけでラッキーじゃないかな。それがものになるかどうかはわからないけど、ひとつだけはっきり言えるのはチャレンジしなきゃ始まらないってこと。そして本気で取り組んだそのさきに、どんな形であれ、道が開けるってことなんだよね。
そしてやりたいことが見つからなくても心配ないよ。目の前の仕事や生活に全力で取り組んでいるうちに道はひらける。そして気がついたら、いつのまにか望んだ場所にいたってのもよくある話。
これは蛇足だけど、人間はいきなり無私にはなれないよ。エゴも大事。本気で欲しいものを手に入れるために、ときには熾烈な争いの中に身を投じることも必要だし、泥の中でのたうち回らないとわからないことだっていっぱいある。攻撃力(活力・実行力ともいう)のコントロール方法を身につけたとき、人間はみんな同じ、どんぐりのせいくらべなんだって事がわかる。そうなったとき、はじめて本当の意味で他人のために働くことができる。
だから気楽にいこうね。
2006年5月18日
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Comment
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今までなかなか分からなかったのですが、今回「本当の役目」というのはお金とか我欲とは無縁のところにあるんだなということがこちらを読ませていただいてよく分かりました。ありがとうございました。
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今までなかなか分からなかったのですが、今回「本当の役目」というのはお金とか我欲とは無縁のところにあるんだなということがこちらを読ませていただいてよく分かりました。ありがとうございました。
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はじめまして キョーコさんの言葉に惹かれるものがありずっとロムしてました。 自分の心のうちを言葉にして頂いたような気がします。 エゴで人を傷つけ、孤独になった私でもまだまだ進んでいけるのかな。 ありがとうございました。
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はじめまして。通りすがりの者です。 この記事が妙にひっかかって詠ませてもらいました。 さすが小説家の経験をおもちのことだけはある明晰で簡潔な 文章で、心地よく読めたのもこの記事にはまった要因の一つかも(笑) 仕事に限らず、その人にとっての役割ってありますよね。 私の今の状態(休職中なんですわ)も次のステップにはかかせないエッセンスになるんかなーとか色々考えさえていただきました。
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こんにちはー、キョーコさん。 キョーコさんのこのブログこそ、本にならないかな、と思いますが。 キョーコさんの言葉、ある時は、雨のように優しく心に沁みわたることも あるかと思えば、ある時は、炎のように胸が熱くなったりと。楽しんでいます。
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はじめまして・・・ どこをどうしたのか忘れましたが、キョーコさんのブログに たどり着いてから読ませていただいています。 最後の一言「だから気楽にいこうね。」・・・に涙が溢れた私です。
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わたしにとっても、かなりタイムリーなお話でした。 ちょっと前までは将来ビジョンの明確なイメージがあったのに、最近薄れてボンヤリしていたんです。キーワード的なものもごちゃごちゃと在り過ぎて、収拾がつかない感じです。近々断食に行くので、その中でなんとな~く考えてこようと思います
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sumairy.cafe 和 さん こんばんは。そうですね。そしてそれを理解するには、我欲にまみれてみなければわからないことも多々あるんですよね。
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やまめさん はじめまして。いつも読んでくださってありがとう。 >エゴで人を傷つけ、孤独になった私でもまだまだ進んでいけるのかな。 もちろん。まだまだこれからですよ!!
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パラボラさん はじめまして。引っかかってくださって嬉しいです(笑)。 役割なんて長い人生、その時々でころころ変わるし、最後の最後に笑えばいいかなと思います。 休職もまた必要なステップでしょうね。
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ayaさん こんばんは。う~ん・・・身にあまるお言葉(笑)。ブログは気楽に書いてますが、楽しんでもらえると嬉しいです♪
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miyuさん はじめまして。 いつもありがとう。誰にでも響く言葉ってありますよね。人生、楽しまなくちゃね♪
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soildance さん >ちょっと前までは将来ビジョンの明確なイメージがあったのに、最近薄れてボンヤリしていたんです。 次のステップに進む前特有の状態ですね。 断食ですか@@ しっかりグランディングして断食してね。応援してます。
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小生も沖縄に惹かれ、沖縄に何度助けられている事か。。。 いつも内地に帰る時、独り言で「また助けられちまったな…」とつぶいやいてしまいます。 ノロの血を引く方から同じ事言われましたよ(^-^;)。 「焦っても悪くなるだけだ、ちんたらやれ。」と…。
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源為朝さん 為朝さんはほんとに沖縄に縁があるんですね。 ブログを拝見していてそう思います。 ノロの方に言われましたか(笑)。 まあそれなりに生きていると、そのへんのことがわかってくるんですよね。
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たどり着く、見つけるためにジタバタもがくことは絶対に必要な通過点だとは分かっていても、出口・・・光・・・がなかなか見えてこないと、時々虚しくなるんですよね。。
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Gさん こんばんは。 その気持はわかりますよ。わたしもよく落ちこみましたからね。そういうときは飲んで歌って愚痴るのもいいかも。 ・・・で、発散したら、仕切り直しですね。
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キョーコさん、お久しぶりです。 まるで今の自分へのメッセージかと勝手に思い込んでしまうくらい(笑)心にしみこんで来ました。 おぼろげながらも、惹かれること、自分がやりたかったこと・・・それと現実に生活していくため(欲ですね)のお金の問題の狭間で。どっちつかず、です。 我欲、将来の不安、失敗を恐れる心・・そんなもので自分に蓋をしてしまい、今は全然動けない状態です。 心のままに、自分の表現力を磨き、詩や絵や物語や歌や言葉・・それで誰かを癒したり心を動かすことができたなら・・・というのが小さな頃からの夢でしたが。
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Bettyさん こんにちは。レスが遅くなってすいません。 我欲や将来への不安な気持。 よくわかります。 現実的な生活能力は必要ですものね。 たとえいまは好きなことにかかわれない状態であったとしても、それが心からBettyさんが望むものであれば、いつかきっとチャンスがやってくると思います。