16年間で1万人以上の悩み相談にのってきたシャーマンが脳科学・心理学・スピリチュアルな世界の真理をベースにお届けする、魂のミッションを生きるためのロードマップ

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サハラ・レクイエム 1  噂 

 
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脳科学と心理学に精通し、16年間で1万人以上の相談にのってきたシャーマン。「信じる力は、世界を変える」がモットー。自分自身を信じる力・愛を受け取る力を育てる方法、激動の時代を乗り切る極意を教えている。 著書「なぜ眠り姫は海で目覚めるのか? 超ネガティブ思考を解除する3つのメソッド
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 突然むかし書いた短編小説をアップしました。
 今頃どうしてって? このところ忙しくて新規の記事が書けないのもあるけど、まあ・・・・ひと言でいうと、カミングアウトですね。
 いま読むと、いろいろ粗も見えて恥ずかしいんですが、まあいいや。
 若かりし頃の思い出(?)というわけで、五夜連続のお届けです。
 興味の無い方はさらっと流してくださいね~。
 

◆サハラ・レクイエム 目次◆
サハラ・レクイエム 1 「噂」
サハラ・レクイエム 2 「ミサンガの少女」
サハラ・レクイエム 3 「シンゲッティ」
サハラ・レクイエム 4 「砂漠に棲むモノ」
サハラ・レクイエム 5 「意志」
 

『サハラ・レクイエム 1  噂  』

 

 
「亡者たちのキャラバン?」
 高杉真一は浅黒く陽焼けした顔にいぶかしげな表情を浮かべて聞き返した。
 テーブルをはさんで向かい側にすわっていた山崎隆夫は高杉の反応を楽しむように、ニヤニヤしながらビールジョッキに手を伸ばした。
「そうよ。こいつは最近聞いた話なんだがな、なんでもサハラの西、ちょうどモーリタニアからマリにかけてのあたりに、そいつらがうじゃうじゃと出るんだそうだ。――ハルマッタンとともに、亡者たちのキャラバンがやってくるってな」
 

 山崎は真顔で言った。
 一瞬、高杉はぽかんとして山崎を見つめた。
 そこは新宿通りに面した雑居ビルの一階にある居酒屋だった。忘年会帰りに流れてきたサラリーマンや学生でごった返す店内は蒸し暑く、白い割烹着を着た威勢のよいウェイターがビールジョッキをいっぺんに八つも持って忙しそうにテーブルに運んでいる。酔っぱらった客のにぎやかなおしゃべりに混じって、流しっぱなしの有線放送から聞こえるハスキーな声の黒人歌手の歌うホワイトクリスマスの甘いメロディーが耳に心地よい。バイク雑誌の編集長をしている山崎と一緒の時は、たいていこの店で飲むことが多かった。
 

 高杉は、どこかひょうきんな山崎の丸い顔を見ているうちに、急におかしくなって笑い出した。
「まさか」
 ハルマッタンとは、二月から三月にかけて、サハラ砂漠から吹く乾いた風のことだ。アフリカ大陸の北西部に位置するモーリタニアでは、このハルマッタンが吹くと比較的過ごしやすい冬が終わり、日中の気温がかるく四十度を超える過酷な夏がやってくる。
 山崎は通りがかりのウェイターにビールのおかわりを頼んだ。
 


「おれもはじめは冗談だと思ったよ」
 高杉はようやく笑いがおさまると、ねぎのたっぷりのった奴豆腐を口に運んだ。高杉は週刊誌などにスクープ記事を売るフリーのルポライターだ。三ヶ月海外で取材をして、帰国して一ヶ月もたたないうちにふたたび出てゆく。ここ十年はずっとそんな生活だ。今回も、つい一週間前に熱い紛争の真っ只中のカシミールから戻ってきたばかりだ。むこうでは、ぱさぱさしたローティーと呼ばれるインド式のパンと豆のスープばかり食べていたせいか、豆腐のような純粋な日本食がやたらおいしく感じられる。
 

「なんだ、冗談じゃねえの?」
 高杉はからかうようにそう言った。
「まあ聞けよ。おれがはじめてこの話を聞いたのは、半年くらい前だったかな」
山崎はテーブルの上に置いてあった煙草を一本出すと火をつけた。
「一年かけてアフリカを走ってきたっていう若い奴から電話がきて、ツーリングレポートを書いたんだけど、うちで使ってくれないかって言うんだ」
「アフリカ……か」
 

 高杉の顔になつかしさと同時に、なんともいえない複雑な表情が浮かんだ。
 あれは高杉が高校を中退してすぐのことだから、今から十五年以上も前のことになる。その頃高杉はサハラ砂漠縦断ツーリングに行くための資金を貯めるためにひたすら働いていた。五年間働いてようやく資金が貯まると、高杉はオフロードバイクのなかでも、燃費がよく、耐久性に優れたSX200Rを手に入れ、インド行きの船に乗った。
 

 船がインドに到着すると、生まれてはじめての海外ツーリングが始まった。インドのカルカッタから出発して、パキスタン、イランを抜けてトルコのイスタンブールまで続く、いわゆるアジアハイウェイと呼ばれる約一万キロの道のりを高杉はひたすら走った。そして地中海沿岸を走ってジブラルタル海峡を経て、アフリカ大陸に渡った。高杉はいったんモロッコに入国したあと、その当時のサハラ縦断の代表的な中継地点であるアルジェリアのタマンラセットとアガデスのキャンプを通ってセネガルのダカールまで走りぬけた。
 

 ちょうどその頃、日本では海外ツーリングブームがはじまっていた。そのため海外のツーリング情報を知りたいライダーも多く、サハラ砂漠縦断などのツーリングレポートはじゅうぶんに価値があった。もっとも高杉はツーリングレポートを書くつもりはなかった。それどころか、東京に戻ってきてからの高杉は、まるで一年間の放浪の反動のように毎日酒を飲んでばかりいた。これまでずっとサハラ砂漠のことだけを考えて生きてきた。ところが目的を果たしてしまったとたん、何をしていいのかわからなくなってしまったのだ。
 

 山崎と知り合ったのはそんな頃だった。いつものように酒場で飲んで暴れて、運悪くその場にいた山崎を殴ったのがきっかけだった。翌日、飲み屋のおかみに教えてもらった編集部に謝りに行くと、顔を腫らした山崎が出てきた。最初は憮然としていた山崎だったが、いろいろ話をしているうちに、高杉がサハラ帰りだということがわかると、ちょうど来月サハラ砂漠の特集記事を組むから、簡単なツーリングレポートを書いてみないかともちかけてきた。ところが高杉が書いた記事は意外に評判がよかったらしく、以来バイク関連の簡単な記事を定期的に書かせてもらえるようになった。
 

 書くことがメシの種になるなんて、それまでの高杉は考えたこともなかったから新鮮な驚きだった。勉強なんか大嫌いだったが体力だけは自信があった。だから体を使って文章を書くのなら、自分にもできるかもしれないと思った。いつのまにか書く媒体はバイク関係の雑誌から週刊誌へと変わったが、山崎との付き合いはずっと続いていた。
 

「で?」
 高杉は続きをうながした。
「ああ。ま、十年前ならともかく、いまどきアフリカにツーリングに行く奴は掃いて捨てるほどいるからな。それだけじゃ記事にならないって言ったわけよ。でもまあ、大事な読者だからな。とりあえず話だけでも聞いてみようってことになったんだ」
「なるほど」
「会ってみるとまだ青臭い学生みたいな奴でな。言ってみれば、これまでさんざん使い古されたツーリングレポートの域を出ていないんだよな。悪いけど、そんなものいまさら取り上げてもしかたないし、適当なところで話を切り上げて帰ろうと思ってたら、突然そいつが、そういえば山崎さん知ってますかって言うんだ。なにがだって聞いたら、案の定、最近サハラに亡者、つまり幽霊が出没するって言うんだ」
 

 そう言いながら、山崎はウェイターが運んできたジョッキを受け取った。
 高杉はニヤニヤしながら言った。
 

「砂漠の幽霊ってのは、やっぱり足がねえの?」
 山崎も思わずニヤリと口元に笑いを浮かべた。
 

「おれもさ、その時は話半分に聞いてたわけよ。ところが、つい一ヶ月前のことだったかな。おれの知り合いで、世界一周ツーリングに行ったっきり、ずっと音信不通になってた奴がいるんだけど、そいつからひょっこり電話があってな。どうやら、日本に帰ってきているらしくて、それならひさしぶりに飲もうってことになったんだ。学生時代からの友達で中田っていうんだが、とにかく面白い奴でさ。すっかり酔いがまわった頃、中田が妙なことを言い出したんだよ」
 

「妙なこと?」
「ああ。おまえ、砂漠をうろつく幽霊って見たことあるかって言うわけよ」
 高杉は、ほう、というように山崎の顔を見た。
「おれも正直言って、半年前に聞いた話なんかすっかり忘れてたからな。最初は、アフリカ帰りの奴らのあいだでは、そういうジョークが流行ってるのかと思ったんだが、どうやらそうじゃないらしい。おまけに、その幽霊ってのは、ひとりやふたりじゃないって言うんだ」
 

 山崎はそこまで言うと、いきなりテーブルに身をのりだした。
「聞いておどろくなよ。頭にターバンを巻いた遊牧民やら迷彩服を着た兵士やらが、それこそ何百何千単位で列をなして砂漠を移動していくって言うんだ。それも、ふつうの姿じゃない。どいつもこいつも、頭が割れて脳みそがとびだしていたり、足が片方なかったり、ようするに死んだその時の状態でうろつきまわっているわけよ」
「まるで、B級ホラーだな」
 高杉は茶々を入れたが、山崎は取り合わなかった。
 

「あいつが言うには、あっちの連中はいまさらこんな話を聞いても、誰もおどろかないって言うんだ」
 ウェイターが注文したモツ煮の鉢を運んできた。高杉は味噌の染みこんだ大根を皿に取り分けながら尋ねた。
 

「どういうことだよ?」
「やつらが現れるようになったのは、ここ一年ばかりのあいだらしい。それもはじめは、数人単位だったものが、あっという間に百人、千人単位にふくれあがったって言うんだ。やつらが通ったあとは砂嵐が何日も続いて、やっとそれがおさまった頃には、なにもかもが砂に埋もれてしまうって話だ」
 

 高杉はうなった。頭の中で、赤茶色の砂漠を無数の亡者たちがうろつきまわっている姿を想像してみた。ゆらゆらと陽炎の立つ、あの乾いた大地を、白いターバンを巻いた亡者たちが音もなく移動してゆく。その光景はわけもなく心を惹きつけるものがあった。だが現実にそんなことがありえるとは思えなかった。
 

「やっぱり、担がれたんじゃねえの? さもなきゃ蜃気楼ってことも考えられるよな」
「蜃気楼? 別々の時期に、何人もの人間が同じものを見るってのか?」
 高杉はわずかに眉を寄せた。
 山崎はすっかりぬるくなったビールを一口飲むと、考え込むように言った。
 

「これが、たんなる噂話ならおれもそう思ったよ。あいつに担がれたか、さもなきゃ集団で蜃気楼でも見たんだろうってな。でも、あいつは妙に血の気のない顔して言ったんだ。奴らを見た人間は必ず死ぬ――ってな」
 

 一瞬、首筋の毛が逆立った。高杉は思わずうしろを振り向きたい衝動にかられたが、かろうじて我慢した。山崎にからかわれるのが癪だったからだ。だいたい、いまどきこの程度の話じゃ子供だっておどろかない。それじゃあ、いま寒気を感じたおまえは何なんだと、即座に自分で自分につっこみをいれてから、高杉はいくぶんバツが悪そうにつぶやいた。
 

「たちの悪い冗談だな」
「そうだよな……。亡者たちのキャラバンなんて、あまりにも現実味がない話だしよ。でもな、あいつは……中田は、自分も奴らを見ちまったんだって……そう言ったんだ」
山崎の口調はどことなく歯切れが悪かった。
 

高杉は話の内容よりも、山崎の困惑したような表情のほうが気になった。ちょっとやそっとのことでは動じない図太い神経の山崎がそんな顔をするのはめずらしかったからだ。
 

「見たって……ターバンを巻いた幽霊を見たって言うのか?」
 山崎は胸ポケットから煙草の箱を取り出したが、あいにく空だった。
「ちぇっ……切れてやがる」
「おれのでよけりゃ」
 高杉は妙な緊張が途切れたことにいくぶんほっとしながら、白いネルのシャツの胸ポケットからくしゃくしゃの煙草をひっぱりだした。
「お、すまんな」
そう言って、山崎は高杉から一本もらって火をつけると、通りがかりのウェイターに煙草を頼んだ。
「中田の話によると、やつらと出会ったのは、シンゲッティから東に百キロほど走った所だったらしい」
 思いがけない名前だった。
 

「シンゲッティ……?」
 なんともいえない、奇妙な感覚が高杉をとらえた。胸の奥で感情がざわっと揺れたような、いやな感覚だった。高杉はかすかに眉を寄せた。
「ああ、あのあたりは最近、とくに砂漠化がひどい場所らしいが、それでもまあ、走れないほどじゃないらしい」
 山崎はそこまで言ってから、ふと思い出したように高杉の顔を見た。
「……そういえば、おまえも十五年前、行ったことがあったよな」
「……ああ」
 

 どこまでも続く、赤茶色の砂におおわれた大地。遊牧民のキャンプを過ぎ、剥き出しの大地にごつごつとした瓦礫がころがる坂道を登りきったとたん、ふいに視界がひらけ、真っ青な空とゆるやかなスロープを描く砂の海がひろがった。高杉はその場に呆然と立ち尽くしたまま、はるか地平線のかなたまで続く砂の海を見つめた。十五年前の、なかば風化しかけていた記憶が、思いがけない鮮やかさをともなって高杉の脳裏によみがえった。同時に、奇妙な、胸騒ぎに似た感覚がよりいっそう強くなった。
 

なんだろう……?
高杉のかすかな不安の入り混じった表情に気づいたのか、山崎は高杉の顔をのぞきこんだ。
 

「高杉?」
「あ? なんでもねえよ。で?」
 高杉は話の続きが気になった。
 

「ああ。で、あいつがバイクを止めて、砂漠の真ん中で休憩していると、突然やつらが現れたらしい。はじめは度肝を抜かれて呆然と見ていたらしいがな」
 高杉はひどく喉が渇いているのに気づいてビールに手を伸ばした。すっかり泡が消えてぬるくなったビールは味もそっ気もなかった。高杉はそいつをいっきに飲み干すと、わずかに眉をしかめて手の甲でくちびるをぬぐった。
 

 山崎はそのようすを黙って眺めていたが、ふたたび話しはじめた。
「でな、あいつもしばらく呆然としてたらしいんだが、そのうち少しずつその状況に慣れてくると、ふとその中に若い女がいるのに気づいたらしいんだ」
 

「若い女?」
 高杉はどきっとした。
「それも日本人だったらしい」
「……日本人だなんて、よくわかるな」
「ああ、ほとんどの幽霊がアラブ系の連中だったのにくわえて、彼女だけが違うから妙に目立ったらしい」
「違うって、どう違うんだよ?」
 高杉は声をうわずらせた。
 

「つまり、ほかの幽霊が血だらけだったり、ぼろぼろなのに、彼女だけがまるで生きているように見えたって言うんだ」
心臓の動悸が早くなった。……おれは、どうしちまったんだ? 
「おまけに、その女の幽霊はモトクロスパンツにオフロードブーツをはいて、腕にミサンガをつけていたらしい」
 わずかに沈黙がおりた。
 

「ミサンガ……」
 高杉は口の中でちいさくつぶやいた。
「ああ、左腕だって言ってたな。濃い青だから印象に残っていたらしい」
 ふいに高杉の脳裏に、頬のあたりに、まだどこかあどけなさの残る女の顔が浮かんだ。
 

 ――とも子……?
 高杉は、青いミサンガとシンゲッティという奇妙な符合が、記憶の底にしまい込んだはずの感情を揺り起こしてしまったということに、突然気づいた。
冗談じゃねえよ……! 高杉はひどく理不尽な気がして突然腹が立った。おまけになんだか胸のあたりがむかむかしてきて、吐きそうな気分だ。
 高杉は口を押さえた。 
 

「おれが聞いたのはそこまでだ。亡者たちのキャラバンを見た奴は必ず死ぬって中田は言ってたけど、おれと朝まで飲んでたぐらいだからよ。あいつはちゃんと生きてるしな。……おまえなら、この話どう思う?」
 

 山崎はそこまで言ってから、ふと高杉の表情に気づいて怪訝な顔をした。
「高杉、おい、どうした? おまえ、さっきから変だぞ」
 

 ……変なのはわかってる。
 高杉は心の中でつぶやいた。
 だが吐き気に似た胸の苦しさはおさまりそうになかった。

(続く)
 

◆サハラ・レクイエム・シリーズ◆
サハラ・レクイエム 5 「意志」
サハラ・レクイエム 4 「砂漠に棲むモノ」
サハラ・レクイエム 3 「シンゲッティ」
サハラ・レクイエム 2 「ミサンガの少女」
サハラ・レクイエム 1 「噂」

 

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