存在している、ただその事実があるだけだ
ロバート・フリッツの『自意識と創り出す思考』を読み終わった。
これはめちゃ面白かった。
テーマは自意識と人生の成果物について。
若い頃は誰もが何者かになりたくて悩んだり、自分探しをする。客観的にみたら自意識過剰な状態なんだけど、苦しいから必要以上に「自分」にこだわる。わたしも30代後半くらいまでそうだった。自分には価値がない、無力だと思い込んでいたんだよね。
あれは30代半ばくらいだったかな。ちょうど子育ての真っただ中で、働く必要に迫られた。お金が必要になったんだよね。でも子どものそばにいたくて外に働きに行きたくなくて、思いついたのが自宅でできて自分の才能だけでお金を得る方法。それが占い師だった。まだインターネットがいまほど一般的ではなかった時代だったけど、ちいさな雑誌広告と口コミで予約の取れない人気占い師になるのにそう時間はかからなかった。
自己肯定感のめちゃめちゃ低かった当時のわたしは占いでお金をいただくと決めて、現実的に行動することで経済的に潤うという欲しい結果を出すことができた。
もし当時のわたしが占い会社の告知・集客・占うという現実的なシステムの構築に集中せずに、自己肯定感の低さを埋め合わせるような人気占い師になることに意識が向いていたら、お客さまの反応に一喜一憂して、つねに「自分が人気占い師になれるわけがない」という不安や焦りに苦しんでいたかもしれない。
すくなくとも、あんなに楽しく仕事をできなかったと思う。
この本を読んでいたら、がむしゃらに頑張っていたあの当時のことをふと思い出した。
自己肯定感が低くても、目標にフォーカスすれば欲しい人生が手に入るというのがこの本の主旨。自意識という出口のない迷路の中でもがくのをやめて、行きたい場所、観たい景色があるなら人目を気にせず一歩踏み出すこともできる。
弱かったり、怠惰だったり、叶えたい夢があったり、「自分」という存在はいろんな自分の集合体だ。その中に無力な自分がいてもいい。
どんな自分を持っていても、欲しい人生をGetできる。
でもいちばん心に響いたのはこの部分。
生きていること、存在していることを正当化しなくていい。ただ存在している、という事実があるだけだというくだり。
たとえばピアノができるから存在価値がある、能力があるから存在価値がある、という考え方は裏を返せば、「能力や社会的な労働などの価値を提供できないなら自分は存在してはいけない」という強烈な思い込みがあるってことなんだよね。
わたし自身も10代の頃、重い病気で未来を失い、孤独と絶望で生きているのが辛かった時期がある。
そのときにわたしを苛んだのが「役に立たない人間には存在価値がない」という思い込みだった。
当時のわたしはロープ際まで追い詰められて、
「でも、生きている。それだけは誰にも否定できない。だってわたしは生きているんだから！」
と、心の中で叫んでいた。命そのものの誇りみたいなものがずっとわたしを支えてくれた。
この本を読みながら40年も前の、まだ10代の頃の記憶が甦った。懐かしいなあ。
そしてこの本は、
「生きていること、それがすべてだ。なぜなら、生まれたってことはそれだけで存在を祝福されているのだから」
時を越えて、そう語りかけてくれたような気がする。
感想文を書いてたら、なんだかまたわくわくしてきちゃった。
おすすめです。
2018年11月28日
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