龍を生む夢
ニ、三日前に気になる夢をみた。
夢のなかでわたしは妊娠していた。
おなかのふくらみはまだそれほど大きくなくて、臨月はもう少し先のように見えた。
ところが突然産気づいてしまった。
まずい。急がなくちゃ・・・と思っているうちに、あっという間に破水して、それが生まれてしまった。
体から出てきたそれは、金色の皮膜に包まれた体長1メートルほどの金色の蛇だった。
胴回りの太さと体長が見合っていなくて、蛇というよりはツチノコ(?)みたい。
それはまだへその緒でわたしの体と繋がっている。
わたしは早く病院にいかなくちゃと思った。
まだ生まれるには早すぎる。
あわててそれを抱きかかえた瞬間、ぽろっとへその緒が取れてしまった。
え~!?
おなかに戻せなくなっちゃった。
どうしよう・・・・本格的に生まれちゃった。
☆
といったところで目が覚めた。
妙に印象的な夢だった。
そこで翌日、ひさしぶりにドリームボディーワークをやってみることにした。
ドリームボディワークというのはプロセスワーク(POP)とも呼ばれていて、夢や体の症状は個々の内面の成長のプロセスを示しているという考え方に基づくミンデルのセラピーだ。
そして夢に出てくる象徴的な人物やものをドリームフュギアと呼ぶ。
☆
さっそくドリームフィギアである蛇になってみる。
夢のなかの蛇の役をやっていると考えてくれればいい。
プロセスワークをやるといつも思うんだけど、トランス状態にはいるチャネリングとかシャーマニックな儀式によく似ているんだよね。役になりきるって意味では演劇そのものだし、だいたい演劇自体がある種のトランス状態なわけだから当然か。これを考えたミンデルは現代のシャーマンだといわれているけど、まさにそのとおりって感じだね。
生まれたぱかりの蛇になってみると、心の奥から笑いがこみ上げてくる。
くっくっくっく・・・・
やがてそれは哄笑に変わった。
「やっと生まれた。やっとこの世に生まれた」
圧倒的な自信と強い意志。
――まだ準備が整っていないと思うが?
心の一部に残しておいた冷静な意識をもったわたしが問う。
「準備が整っていないだと? じゅうぶんに整っている。すべてが整然と整備されてから生まれるとでも思っていたか? それでは遅い。混沌と混乱の最中だからこそ、我が必要なのだ」
――混乱と混沌だからこそ?
「そうだ。安全と常識という殻をかぶった人間のなんと愚かなことか。すでに世界は動きはじめている。いまこそ、我はこの力を自由に使う」
――おまえは、誰なのか?
「創造」
ふいに蛇の体が金色に輝いた。
次の瞬間、それは巨大な龍に変わった。
腹の底から笑いがこみあげてくる。
愉快でたまらないのだ。
あたりに圧倒的な哄笑が響きわたった。
「クックックッ・・・・クックック・・・・ハーハッハツハッハッハッ! おぼえておけ!おまえはわたしだ。だがもう生まれてしまった。逃げることはかなわぬぞ!」
☆
ふいに意識が戻った。
POPでは現実はひとりひとりの内面の投影から作られていると考える。
自分では気づいていない本当の意志が現実生活にきちんと表現されていないとき、ひとは夢や病気などの身体症状という形でそれを受け取るんだよね。そして自分の内側からのメッセージと向き合い、より深い自分の意志を生きることがすなわち成長であり個性化なんだよね。
同時にその夢は個人のそれにとどまらない。個人と世界は有機的につながっていて、自分の夢は自分のものでありながら自分のものではない。自分の夢は自分自身の夢であると同時に、世界そのもの、宇宙そのものの夢でもある。わたしたち個人は世界の縮図だと考えればわかりやすいかもしれない。
わたしが見た龍を生む夢は、わたし個人に関していえば、いま暖めているプロジェクトに関係するものだった。まだ準備が整っていないし、さまざまなことに及ぼす影響力を考えると、なんとなく先延ばしにしていたんだよね。でも全体の流れから見れば、動き始めるタイミングなんだなあ。わたしの内側のエネルギーがはっきりと動きたがっているのを感じてしまった。
さらにこれはわたしという個人を越えて、世界の深層の意志をもあらわしている。
――おまえはわたしだ
たしかに龍はそう言った。
どういうことかっていうと、すべての人間は龍に象徴される創造のエネルギーをもっているってことなんだよね。いまはまだ小さな蛇かもしれないけれど、やがてそれは巨大な龍になる力をもっている。そして今、そのエネルギーは動き始めるタイミングにさしかかっているってことを意味しているんだよね。
混沌として形ができていない今こそ、創造力を働かせて状況を切り拓けってことなんだろうなあ。そして創造には破壊と混乱がつきものなんだよね。これは避けて通れない。なんせ創造のプロセスにおける混乱っていうのは好転反応みたいなものだから、わたしたちひとりひとりが問題の本質に目を向けるまでは止まらない。
すでに個人も国も、問題の本質から逃げられないところまで来てしまったということか。
これは年明けの夢とも重なる。
自分自身の課題、そして大人である以上、国と国との問題から目をそらせてはいけない。いま見て見ぬふりをすれば、ちいさな火種はやがて私たちのコントロールのきかない事態になるだろう。そのとき一番大きなダメージを受けるのは、つねに弱者である子どもたちだということをどうか忘れないでほしい。
遠い海を隔てた地域で紛争が起きている。
世界という体が病んでいるとき、個人レベルでは病気や身近な人間関係の不調和という形で現れる。どんなに無関係を装っていても、わたしたちは世界の影響を受けずにはいられない。なぜなら、なんども言うように、わたしたちは世界という体の一部なんだもの。
でも思い出してほしい。
病や苦しみ、あるいは夢は成長への気づきを促すプロセスそのものなんだよね。
わたしたち個人がそれぞれの課題に取り組むことによって、自分のより深い意志に沿って生きることができれば確実に世界は変わる。
なぜならわたしたちは世界の一部であり、私たちの見る夢には世界を動かす力がある。
世界は個人の夢を見る。
個人は世界の夢を見る。
ひとりひとりが地道に成長のプロセスに取り組むとき、世界は音をたてて進化する。
2004年4月17日
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