魂と潜在意識の物語 ３ 「潜在意識をコントロールしよう～ サトルの物語Ⅱ」
３ 潜在意識をコントロールしよう ～ サトルの物語Ⅱ
「宮古島ですか？」
昼下がりのオフィスには上司の高田とサトル以外は誰もいない。
ブラインドの隙間からまぶしい真夏の陽射しが差し込んでくる。
胃痙攣も回復して職場に復帰すると同時に、サトルは営業から広報に転属になった。
「ああ、こんど地方の地酒を宣伝するにあたって、地元を紹介するパンフを作ることになったんだ。酒造メーカーの酒造りにたいする思いとか、その土地の風土とか、そういうもんをちょっと突っこんで紹介していくことで、数ある地酒の中から、うちの商品に愛着をもってもらおう、というコンセプトでいくことになった」
「はあ・・・」
「で、きみはたしか音楽をやっていただろう？」
「え・・・かじる程度ですが・・・」
「そういう感性で、いい取材をしてきて欲しいなと思うんだがね」
それから一週間後、サトルは宮古島に向かう飛行機の中にいた。
宮古島という言葉を聞いたときの、なんともいえない胸の奥がざわめくような不思議な感触。あれは何だったんだろう？
それに・・・
サトルは一ヶ月ほど前から、毎晩不思議な夢をみていた。
夢の中で、きまって大きなガジュマルの木のそばをとおり、南国の甘い匂いをふくんだ空気を感じながら、畑のわきの海へ向かう小道を歩いてゆく。なだらかな白砂のスロープをのぼりきったところで、エメラルドグリーンの透明な海が目の前に広がる。サトルは歓喜して、いっきにスロープを駆け下りる。息せき切って波打ちぎわに降りると、目の前に白い服を着た髪の長い女性が立っている。
夢はいつもそこで終わり。
あの女性は何なんだろう。
なんだか、ずっと前から知っていたような気がするのに、朝起きると、どうしても顔が思い出せない。
今回の宮古島の仕事と何か関係があるんだろうか。
いくら考えても、いくつかの場面が頭の中に現われては消えるばかりで、さっぱりわからない。
「やーめた」
サトルはため息をつくと、窓の外にひろがる雲海に目をやった。
真っ白い雲の波が遙か宮古まで続いているかのように輝いていた。
☆
これまで潜在意識の重要性についてお話してきましたね。
この章では、潜在意識のコントロールの方法をお話してゆきます。
身近な例としてＡ子のケースです。
Ａ子には付き合っている彼がいるのですが、今日はいつもの時間に彼から電話がかかってきません。Ａ子は彼からの電話を待ちながら、どんどん不安になってゆきます。
どうしたんだろう・・・忙しいのかな。
でも忙しくたって電話ぐらいかけられるはず。
それに今週は残業はないって言っていたのに。
もしかして、わたしのこと嫌いになっちゃったのかな・・・。
さらに不安は不安を呼びます。
そういえば先週のデートのときも、なんだかつまらなそうだったし、ここのところ電話の回数も減っているような気がする。もうだめなのかな・・・わたしたち・・・。
電話がこないというだけで、かなり発想が飛躍していますね。おまけに彼女の頭の中では勝手にストーリーが展開していて、すでに別れ話のシーンまで登場していますよね。
ここで潜在意識の働きを思い出してください。
強い不安をもつと、潜在意識は本人がそれを望んでいるのだと勘違いして、不幸な結末のシナリオを書いてしまうと説明しましたね。Ａ子の場合がこの典型的なケースです。
Ａ子自身は気づいていませんが、破局に向かうシナリオをひたすら書き続けているようなものです。おまけに、人間の潜在意識というのは根底ですべてつながっているので、Ａ子の心の中の強い不安は彼にも間違いなく伝わります。
具体的に彼がどんな反応をするかというと、たとえば突然の残業で、すっかり電話するのを忘れていたとします。
やっと仕事が一段落して、Ａ子に電話をかけようかと思いましたが、なんとなく気がのりません。
いいや、明日にしよう・・・。
つまりＡ子の重たい気持ちだけが彼に伝わったため、せっかく電話をかけるつもりだった彼の気持ちにブレーキがかかってしまったというわけです。
さて具体的にＡ子はどうしたらいいのでしょうか？
電話がこない→不安 という自分自身を、ちょっと離れて眺めてみます。
ああ、わたしは彼から電話がこなくて、すごく不安になってるなあ・・・
あ、ちょっと胸が痛いわ・・・
それに、なんかせつないなあ・・・
ふうん・・・そんなにせつないんだ・・・
そりゃそうだよね。
あ、必死でせつなさに耐えてる・・・
なんで、そんなに不安なのかなあ・・・
彼を失うのが怖いから？
べつに電話がかかってこないぐらいで、失ったりしないって・・・
そんなこと言ったって、不安になるんだからしょうがないじゃん・・・
そりゃそうだ・・・心配性な性格だからね、おまけに取り越し苦労ばっかりしてるし・・・
楽天的なひとがうらやましいわ・・・
でも、かわいいじゃん・・・
恋する乙女やわぁ・・・
恋する乙女のＡ子、ただいまどツボにはまっております。
このままＡ子はどツボにはまり続けてまんじりともせずに夜を明かすのか？
あ、なんだかお腹すいてきたな・・・。
お腹が空いたと感じております。
という具合に、芋づる式に破局に向かうストーリー展開をせずに、今この瞬間の、ありのままの自分の気持ちをただ眺めるんです。不安なら不安をただ眺めます。
たとえていえば、不安というタイトルの一枚の写真をじっくり眺めるようなものです。
このカット一枚だけなら映画にはなりません。
そのうち見飽きて、頭の中にちらほらと別のことが浮かんできます。
やがて晩御飯を食べて、ゆっくりお風呂につかっているうちに、残業が終わった彼から電話がかかってきます。
最初はこうした思考方法はなじみにくいかもしれませんが、意識的にやっていくうちに自然に身についてゆきます。
もうひとつ、ぜひオススメしたいのは自分の思考パターンを把握しておくことです。
具体的な方法は毎日、昼間の出来事を大雑把に振り返ることです。
たとえば昼間、上司にあれこれ言われて腹が立った。その気持ちを寝る前までひきずっているなら、それをノートに書いてみるんです。感情のまま書きなぐっていいんです。これを二週間も続けていくうちに、こう言われると腹が立つとか、こう言われると落ち込むといった自分の思考パターンがわかってきます。
たとえば最近どうも彼とうまくいかない。
すぐ喧嘩になってしまうという場合にも、この書くという方法はオススメです。毎日の感情の動きをノートに書いていくうちに、彼のどういう言動に対して腹が立つのかわかってきますよね。自分の怒りのパターンを理解すれば、同じ刺激に対して、こんどはべつの選択をすることもできるわけです。
さて、潜在意識のコントロールのしかたを説明してきましたが、その瞬間、瞬間の不安がどうしても心から消えないという人に、ぜひオススメなのがこれ。
自分自身の魂に協力を求めるんです。
右手の親指を中にして、にぎりこぶしを作り、そっと胸にあてます。すると胸のこぶしを当てた場所があたたかく感じますね。表面のあなたは不安を感じていても、あなたの魂はなにも不安を感じていません。魂のあたたかさを感じることで、いつも守られているんだということを感じてください。
こうすることで、不安な表面の自分を切り離し、魂とのパイプを太くしてゆくことができます。
最初にお話したその瞬間の感情を眺める方法と、自分の中の魂の存在を感じる方法。このふたつの方法を同時進行してゆくことで、より自分の潜在意識をコントロールしてゆくことができるようになります。
そうしたら、生きてゆくことがずっと楽になります。
そして自分の人生をほかの誰でもない、あなた自身でコントロールしてゆくことができるようになるはずです。
なぜなら、だれもが人生という舞台の監督であり主人公だから――。
最終章「４ ミッション 癒してゆく力～サトルの物語Ⅲ」につづく
■魂と潜在意識の物語
魂と潜在意識の物語 １ 「潜在意識の不思議 ～サトルの物語Ⅰ」
魂と潜在意識の物語 ２ 「soul 魂 ～ ミーコの物語」
魂と潜在意識の物語 ３ 「潜在意識をコントロールしよう～サトルの物語Ⅱ」
魂と潜在意識の物語 ４ 「ミッション 癒してゆく力～サトルの物語Ⅲ」
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