魂と潜在意識の物語 2 「soul 魂 ~ ミーコの物語」
ただいま近所のカフェでノマドしながら更新しています。
というわけで、魂と潜在意識の物語 2 soul 魂 ミーコの物語」のお届けです。
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2 soul 魂 ~ ミーコの物語
ミーコは39歳。若い頃から好奇心が旺盛でフットワークの軽さが自慢でした。何かに興味をもつと、つい夢中になって、まわりがびっくりするほどのめりこむところがあります。
オートバイのレースに参戦したり、ロックバンドを組んだり、テコンドーに夢中になっていたこともあります。そうかと思えば、持ち前の声のよさを生かしてラジオのDJをしていたときもありました。この生きかたは結婚しても、基本的に変わることはありませんでした。
そんなミーコが子供の頃からずっと変わらずに好きだったものがあります。それは絵を描く事と物語を創ることでした。といっても、美術部に入ったり文芸部に入ったりして本格的に作品を創るというわけではありません。
ふとした拍子に頭の中に物語のワンシーンが浮かぶんです。それを反芻しながら、すこしずつ世界を広げてゆきます。そしていちばん書きたいシーンだけ書いて、それで終わり。書くのが好きなら小説家を目指すという方法もあるのでしょうが、ミーコはそんなことは考えたこともなかったのです。
それは33歳の誕生日が来る一ヶ月前のことでした。それまでミーコの心の中に立ち込めていたモヤモヤとした、なんともいえない熱い思いが、ある日突然形になり始めたのです。物語が降りてくる……。心の奥から物語が溢れだして止まらない。居ても立ってもいられないほどの熱い思いに、書かずにはいられない。
ミーコは内側から溢れてくる思いに突き動かされるように、ただひたすら書き続けました。そしてようやく作品が出来上がると、今度は誰かに読んで欲しくてたまらなくなりました。これがミーコの小説家への夢の始まりでした。このときから物語を書いては文芸雑誌の賞に応募するという生活が始まりました。
そんな生活が7年も続いたでしょうか。
ある日、ミーコは不思議な夢を見ました。
そこは見たこともない海岸でした。あたりは暗く、漆黒の闇が立ちこめ、遠い水平線と夜空の区別もつきません。ふと視線を落とすと、目の前にちいさな小舟がありました。船底に波がぶつかるたびに、ちゃぷちゃぷという穏やかな音が暗い夜の海に響きます。
いつのまにか星も見えない真っ暗な海面に、ろうそくの明かりが点々とともっています。
それはまるで一本の道のように、遙か水平線のかなたまでまっすぐに続いています。
ミーコは黙って暗い海を見つめました。
かすかな不安と畏れが胸をよぎります。
同時に誰かが呼んでいるような不思議な感覚を覚えました。
ミーコは黙って小舟に乗りこみました。すると小舟は暗い水面をするすると滑り出しました。
海面を渡るひんやりとした風が通り過ぎます。
小舟は星もない夜の海を、ろうそくの明かりに導かれるようにまっすぐに進みます。
やがて船は沖にでました。
ろうそくの明かりはいつのまにか消え、叩きつけるような風が吹きつけます。
そして行く手を阻むかのように、真っ暗な空いっぱいに大きな口を開けた巨大な龍がうねっています。
ときおり稲妻が閃き、そのたびに鱗に覆われた龍の体がギラリと光ります。
ミーコは不思議なぐらい平静な自分を感じていました。
――わたしはこの龍を知っている……
いつのまにか、ミーコは小舟ではなく、巨大な龍の背に乗っていました。
長い髪がはためき、風が頬を叩きます。
――光……!
ミーコがそう思ったとたん、世界はきらめく光に満たされました。
風も光も、思った瞬間、そこにある……そんな感じです。
ミーコは龍に愛しさを感じながら、風の音を聴き続けていました。
次の日から、ミーコは憑かれたように物語を書き始めました。パソコンの変換を待っている時間ですら長いと感じるほど、熱い思いが胸の奥からこみあげてきました。長い長い自分だけの物語。一ヶ月で書き上げると、それから三日間、ミーコは昏々と眠り続けました。
三日目の朝、ようやく目を覚ましたとき、ミーコは自分の胸の中から物語を書きたいという衝動が消えているのに気がつきました。ミーコは不思議な、まるで今はじめてこの世に生まれたような、そんな思いで世界を見つめました。
そしてミーコは気がつきました。
はじめは、ただ物語を書きたいだけだったのに、いつのまにか書くという行為が世間に認めてもらうための手段になっていたことに。そこには魂の奥から生まれる純粋な情熱はありません。
ミーコははじめて物語を書いたときのように、居ても立ってもいられない衝動に突き動かされるまま書き上げた物語を知り合いの編集者に送ると、それまで持っていた公募関係の雑誌をすべて捨てました。もうミーコには必要がなくなったからです。ミーコは彼女自身の渇いた心を癒すために、物語を書くという行為が必要だったのです。
いま、ミーコは心の中に風を感じています。本当に欲しかったのは、永遠という思いだったのだと、いまならわかります。ミーコの第一章は終わりました。でもミーコは心の中に新しい始まりの予感を感じています。物語が溢れるときのように、熱い思いとともに不思議な風景が降りてくるのです。
絵を描こう……
同時にかすかな旋律が心の奥から流れてきます。
たぶん、誰も聞いたことのないメロディー――それは、いまだ形にならない、もやもやとした情熱のようなものに似ているかもしれません。
ミーコは自分には、心の奥で感じるメロディーを形にする才能がないことを短い音楽生活で実感していました。
でも、ミーコは知っています。
いつか、このメロディーを形にしてくれるひとに出会える日がくるに違いないということを。
☆
この章では魂・Soulについてお話してゆきましょう。
みなさんは魂という言葉を聞くと、どんなイメージが浮かびますか? 人間の肉体の中にあって、死ぬとすうっと体から抜けてゆくもの、あるいは魂の叫びという言葉からわかるように、心の底から沸きあがってくる思いなど、ひとそれぞれのイメージがありますね。
わたしはデビッド・ボウイが好きで、若い頃よく聴いていたのですが、そのなかにSoul Loveという曲があります。soulという言葉を聞くと、どうも、この曲を連想してしまいます。個人的な好みの話で恐縮なのですが、心に響く、魂が揺さぶられるという言葉がぴったりなんです。
ディープパープルのハイウェイスターもそうです。いま聞いても、胸の奥がざわめいて、熱い思いが呼び起こされてしまう。あ、本当に本題からズレてしまった(笑い)。でも考えてみれば、感動するという感覚こそ、魂がわたしたちの心と決して無縁ではないという証かも知れません。
一般に魂とは私たちの肉体に宿り、生きている間は私たちの生命のすべてを司り、死ぬと肉体から離れてゆくものとされています。死ぬと肉体から離れる……じゃあ、そのあと魂はどこへ行くのだろうと考えたことはありませんか? 肉体の死によって、魂もまた消滅してしまうのでしょうか? 結論からいうと、魂は肉体が死によって消滅しても存在し続けます。
そもそも魂とは何者でしょう。魂あるいはハイヤーセルフなど、さまざまな名前で呼ばれていますが、その実態はわたしたちひとりひとりの心の奥深くに住む、内なる神と呼ばれる意志をもった霊的な存在です。ここでは一般的にわかりやすい魂という呼びかたで説明してゆきます。
1章で潜在意識の話をしましたね。
魂はこの潜在意識の領域の、さらに奥深くに住んでいます。
私たちがこの世に生まれたときから私たちと共に生き、私たちを通してさまざまな経験を積み重ねながら、魂は日々成長してゆきます。生まれたばかりの魂には、まだあまり力がありません。赤ん坊の私たちが食べて寝て、すくすくと成長できるように肉体をコントロールするだけで精一杯です。
でも私たちが成長してゆくように、魂もまた、どんどん成長してゆきます。肉体の成長のエネルギー源が食べ物だとしたら、魂の成長のエネルギー源は私たち自身の日々の生活から得る学びと愛、そしてこの地球や宇宙に蔓延する意志をもったエネルギー体との交流です。成長した魂は、今度は私たちの人生を喜びで満たすことができるように、私たち自身を守り、導こうと努力し始めます。
使い古された比喩ですが、魂と肉体の関係は車と運転手の関係に似ています。車は私たちの顕在意識、すなわち私たちの人格も含めた肉体、そして運転手は魂です。すべての魂はこの世に生まれたとき、憧れてやまない場所の青写真を持っています。もちろんそこに辿りつくための道も、乗っている車もみんな違います。
たとえば乗用車とトラックでは用途が全然ちがいますよね。トラックは大量の荷物を積むことはできますが、 一般家庭で自家用車として使用するには無理があります。また同じ乗用車でも排気量のちいさな軽自動車はちょっとそこまで行く足代わりには便利ですが、長時間高速道路を運転するには少々しんどいかもしれません。また峠やサーキット走行用にチューンナップされた戦闘的なスポーツカーはそれなりの場所で走ってこそ、その性能をフルに発揮できるわけです。
人間も同じで、乗り物がそれぞれ違う、つまり自分の個性を生かす方法がそれぞれ違うわけです。あるひとにとっては、それが音楽であったり物を作ることであったり、あるいは家族を愛することであったりと、それこそひとによって千差万別でしょう。
魂は私たちが自分自身の能力を最大限に生かすことができるように、私たちにさまざまな形で働きかけてきます。何かを求め、居ても立ってもいられないほどの熱い思いを味わったことはありませんか? あきらめかけた夢が、ある日突然思いがけない形でよみがえってきたことはありませんか? それは、誰よりも魂がそれを求めたからです。
年齢や社会常識やさまざまな制約を考えたとき、私たちの多くは夢や憧れを捨ててしまいます。けれど心の中の情熱が本物ならば、魂は、たとえば降ってわいたアクシデントという形で私たちを立ち止まらせます。そして、自分の本当の気持ちを振り返るきっかけを作ってくれます。私たちが魂の声なき呼びかけに気づかなければ、気づくまで魂はさまざまな手段を使って私たちに呼びかけます。
あなたの魂は誰よりもあなたを愛しています。わたしたちが自分自身であると感じられる人格は潜在意識や魂の大きさにくらべると、本当にちいさな領域でしかありません。
そのちいさなあなたが泣いているとき、魂はあなたの胸の中で、そっとあなたに寄り添っています。そして、もしあなたが自分の魂の存在に気がついたなら、だいじょうぶだよ……いつだって、そばにいるよと、静かに語りかけてくる魂の思いを感じるかもしれません。
それは潜在意識という通路を通り、わたしたちの心に届きます。言葉ではなく、あたたかさや慈しみ、あるいは深い自己肯定感といった穏やかな思いが胸の奥から湧き上がってきたら、それは魂の発する無言の言葉にほかなりません。
人間はみんな心の中に魂と通じる通路をもっています。ただ自分のうちに宿る魂の存在に気づかなければ、通路に続く扉は閉ざされたままです。どんなに魂がわたしたちに語りかけようとしても、わたしたちが聞く耳をもたなければその声は届きません。
魂は私たちを守りたいのです。そっちに行けば、道を見失うよ。そう思ったとき、魂は声が届かないのであれば、たとえばトラブルという形でわたしたちに道を知らせます。あるいは気づかなければならないことがあるにもかかわらず、わたしたちがまったくそれに無頓着であれば、悩み苦しみという形で気づきを促してくるでしょう。わたしたちが、それを受け止めることができれば、そして魂の声なき声に耳を澄ますことができれば、人生は静かにゆっくりと動きはじめます。
わたしはずっと、永遠の愛というものを心のどこかで求めていました。人間の男女の恋愛を通して、それを育てるのは不可能に近いのかもしれないと思ってきました。もしこの世に永遠の愛があるとしたら、それは利害を超えた親の子どもに対する愛情だけなのかもしれない――と。
子供の頃、親からじゅうぶんに愛を与えられたなら、おとなになった時、無私の心でひとを愛することができるようになるのかもしれない。じゃあ子供の頃、じゅうぶんな愛を与えられなかった子供はどうしたらいいんだろうと、ずっと考えてきました。
でも最近、もしかしたらそうじゃないのかもしれないと思うようになりました。なぜなら、すでにわたしたちはこの世に生まれた瞬間、永遠の愛、無償の愛を与えられているということに気づいたからです。たとえ親子の愛情に恵まれなかったとしても、いちばん身近にいる、自分自身の魂という存在から無限の愛を与えられているのだと気づけば、心の内側から愛が溢れてきます。
――こんなにも愛されていた……。
その思いは透明なガラスのコップに水を満たすように、はじめはちいさな自分の心を満たしてゆきます。やがてコップのすべてを満たした水は、コップの縁から溢れ出し、枯れることなく周囲の器を満たしてゆきます。
すでに自分のコップはじゅうぶんに満たされているのだから、まわりの人々に対して何も求めるものはありません。ただ、愛するひとのコップに水が溢れてゆくのが無上の喜びとして感じられるだけです。
最初、愛する人のコップの中の水は枯渇しかけていたかもしれません。けれどあなたから溢れた水が愛する人のコップを満たせば、やがてその人のコップからも透明な水が溢れ出します。そしてあなたのコップから溢れた水と愛するひとのコップから溢れた水はひとつに混じりあい、さらに新たな流れを作り出します。魂の愛というのは、そういうことなんじゃないかなと、思います。
あなた自身の魂は、誰よりもあなたを愛しています。
目を閉じてください。
胸に手をあててみてください。
胸に置いたあなたの手の温かさを感じてください。
その温かさこそ、魂の本質です。
自分自身の魂と交流するには、特別な技術は何もいりません。
ただ手をあてた胸の温かさを感じるだけでいいのです。
そこにあなたの魂がいて、共にいるのだと理解することが、はじまりの一歩です。
魂と潜在意識の物語 3 「潜在意識をコントロールしよう~サトルの物語Ⅱ」につづく
■魂と潜在意識の物語
魂と潜在意識の物語 1 「潜在意識の不思議 ~サトルの物語Ⅰ」
魂と潜在意識の物語 2 「soul 魂 ~ ミーコの物語」
魂と潜在意識の物語 3 「潜在意識をコントロールしよう~サトルの物語Ⅱ」
魂と潜在意識の物語 4 「ミッション 癒してゆく力~サトルの物語Ⅲ」
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