産声
彼女は長いこと泣いていた。
涙もふかず、まるでちいさな子どものように声をあげて泣いていた。
古びた板張りの床に西日が差し込み、ゆっくりと部屋の中を移動してゆく。
どれほど長いこと閉じ込めてきたんだろう?
彼女の痛みと悲しみが胸の中にはいってくる。
その声を聞きながら、わたしは不思議な気持で彼女を見つめていた。
産声――。
それはまるで産声だった。
世界と切り離され、突然この世に生まれてしまった絶望と孤独。
不条理と混沌のなかで、ただひとつ欲しかったのは、失ってしまった記憶を呼び起こすぬくもりだっただろうか。
ひとはなぜ生きるのか?
歌がくちびるからもれる。
それは彼女の魂の歌だった。
彼女の心が流れ込んでくる。
生きている。
生きている。
愛するひとたちがお互いのおろかさのなかで傷ついてゆくのをどうすることもできない自分の無力さがつらかった。
本当に伝えたかったのは罵声ではなく、「そばにいて欲しい」という言葉だけだった。
でももういいのだと。
それすらも愛しいのだと。
長い時間が過ぎた頃、彼女は静かに目をあけた。
ねえ、キョーコさん。
歌を聴きながら、ただ青空の下で祈っていたよ。
うん。知っていたよ。
世界はたしかに生まれ変わったのだろう。
どこにでもいる、平凡な少女の心のなかで。
ちいさな卵を抱いて
いまこの瞬間、世界は終わることなく生まれ続けているのかもしれない。
2006年6月6日
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Comment
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はじめまして。 とても心に響きました。 また時々お邪魔させて頂きます。 感謝。
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ゆかさん コメントありがとうございます。 いつでも遊びに来てくださいね♪
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ありがとう、キョーコさん! 読んでいるうちに涙が止まらなくなりました・・・ そして、その涙が乾く頃、私は失っていた自分を取り戻しました。 もう大丈夫!!今回は今までに無く辛かったけど、復活です
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キョーコさん ありがとう☆
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ふくゆうさん よかったです。仕切りなおしですね。
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めぐさん こちらこそ、いつもありがとう。