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ゼロサムゲーム? V字回復? 魂のチャレンジ

「責任を取りたがらない奴ばかりなんですよ」
 
 先日某企業の役員さんの相談にのっていたときに、ため息交じりに彼の口からでた言葉。彼は御年58歳、企業向けの数十億円クラスのラインナップをいくつも扱ってる従業員1,500人を抱える中堅企業の役員さんで、定期的に相談にのっているオジサマのひとりだ。
 

 日本企業の多くが高度成長期とバブルの恩恵にあずかり無戦略でもモノがどんどん売れた時代はとうに過ぎ去り、いまままでは世界の競合とは戦えないという状況に追い込まれている企業は思いのほか多い。
 
 
 とくにモノづくりの企業の場合、そもそも経営陣が経営のプロではなく元技術者だから自分の専門分野の知識は豊富だけど、全体の流れを観て戦略を立てて企画・経営をするのが苦手なことも多い。今の時代、それでは世界で戦えない。思い切って社内の風土やシステムにメスを入れる必要があるとわかっていても、誰もが渦中の栗を拾うのを避けるのは世の常だ。 
 

 そんなわけで責任の押し付け合いというか、懸案事項を解決するにあたり率先して手を上げるひとがいないのだとか。たしかに対処に失敗すれば責任を取らなきゃいけないわけで、その場合はこのまま何も起きなければ手に入ったであろう老後の安泰は失うかもしれない。かといってこのまま手をこまねいていれば数十億単位の損失がでるわけで、オジサマ的にはため息が出るよね。
 

 解決方法はずばり、腹をくくること。
 誰もが責任を取りたがらない状況で手を挙げた場合、彼の手腕ひとつに会社の未来と従業員の生活と彼自身のこれまで築きあげてきた名誉がかかっているわけだから、腹をくくれといわれてもそう簡単にできるものじゃない。

 
 でも、これ、彼のテーマなんだよね。
 人間って、もう後がないというところまで追い詰められて腹をくくったときにはじめて見えてくる景色があるんだよね。この心理状態になると過去の後悔、未来の不安、個人的な薄っぺらなこだわりに惑わされなくなる。
 
 
 彼は大きなビジネスをする経験に恵まれてここまできた。ビジネスの成果が出た時の達成感や大きな組織を動かす面白さと責任、相応の財力に見合った暮らし、多くのひとが望む人生の果実を手に入れたいま、彼の魂はこの先同じことを繰り返していても意味がないと感じているのだろう。
 

 彼がまだ経験していないのは自分の我欲を捨てて、他者のために尽くすことだ。若い頃に誰もがいちどは考える「自分とは何者なのか」から始まって、我欲を全開にして自分の大事にしている価値観を仕事や生活の中で表現する熾烈な勝負の時期も過ぎて、他者を認められるようになってゆくといった年相応の経験を重ねてきたからこそ、やっとこの年齢になって腹をくくって渦中の栗を拾える胆力がついたのだ。
 

 58歳のいまの彼ならできるだろう。
 すくなくとも彼の魂はそれを望んでいる。
 ちいさな自分を突破したいのだ。
 いまの彼の魂には我欲をベースにしたゼロサムゲームの世界は狭すぎる。
 彼の魂はより広大な意識状態を経験して、そこを通じてアクセスできる未知のアイデアをこの世界に持ち込みたいのだ。
 
 
「どうしたもんですかね」
「欲張りですね。この世で望むすべてのモノは手に入れてきたじゃないですか」
「たしかに」
「童心にかえって、観たことのない、まったく新しい景色を見てみたくないですか?」
「そうですね。もうすぐ還暦だし、子どもにかえるのも悪くないかな」
 

 いつだって、この世界に新しい力を持ち込むのは童心と勇気をもったチャレンジャーたちだ。
 

 58歳のチャレンジ。
 すっかりオジサマのファンになってしまった。
 わくわくしながら見届けるよ。

 
2017年6月10日