レイライン7 出雲の御祭神

 レイラインは鍼灸でいうところの経絡に似ている。
 ツボにあたるパワースポットに詰まりや滞りがあれば、レイライン全体の気の流れが悪くなって、あちこちでさまざまな障害を引き起こす。
 

 パワースポットがいい形で機能する条件は、(1)大地の力、(2)天体の影響力、(3)パワースポットに集まる人間の気、(4)祀られている御祭神の気、の四つだったね。
 

 この四つの条件がそろっていれば、いい感じで日本列島全体に張り巡らされたレイラインに気が流れるはずなんだけど、残念ながらスムーズに機能しているとは言い難い。虚血状態とは言わないまでも、どうもあちこち詰まりがある。言ってみれば血のめぐりの悪い体みたいなものかな。
 

 パワースポットにもそれぞれ影響力の違いがあって、重要なポイントが機能不全だと全体にあたえるダメージはそれだけ大きい。数あるパワースポットのなかでも出雲はレイラインの要のひとつなんだよね。ここがきちんと機能すれば、ほかで多少の詰まりがあってもレイラインに気が流れ出す。
 

 ・・・・にもかかわらず、出雲は機能していない。少なくともこれまでは。
 そんなわけで、現状を見きわめるべく出雲大社に飛んだのは2006年11月のことだった。
 


 11月の出雲は風がつめたい。
 出雲大社の敷地内に一歩足を踏み入れると、足元からあたたかい気が立ち上っているのがわかる。レイライン特有の大地のエネルギーだ。
 

 広い境内を散策しながら本殿の向かって右側にある釜社の前までくると、まるで温風が吹き付けるように強いエネルギーが流れてくるのに気がついた。エネルギーの出所は釜社ではなく、背後に広がるうっそうとした森の向こうだ。この森は亀山へとつづいている。
 

 どうやら縄文の人々が龍蛇神と呼んだ大地の力はじゅうぶんに機能しているらしい。これに対して、ここに訪れる人間の気のほうはいろいろだけど、これだけ強い自然のエネルギーが働いているなら、人間の気の乱れはある程度浄化されているのだろう。
 
 
 となると、残るはひとつ。
 
 
 本殿の前で手を合わせ、心の中で御祭神に呼びかけてみる。
 

 ・・・・やっぱり・・・・。
 

 書きにくいことをあえて書くけど、はっきり言って、御祭神の気はずーんと重い。御祭神である大国主命の魂は神の領域に至るほどには浄化されていない。
 ・・・・つまり成仏していないってことだ。
 

 本殿の奥から流れてくる気は深い悲しみを背負った『人間』のそれだった。大国主命の悲しみは大地のエネルギーにかき消されて、参拝者の心には届かなかったに違いない。けれどレイラインの流れを滞らせるにはじゅうぶんだった。
 

 なぜ彼はこれほどの悲しみを抱えていたのだろう?
 大国主命といえば、日本書紀・古事記に出てくる国譲り神話の悲劇の主人公として有名だよね。けれどそれは歴史を神話として書くことによって、生々しい事実を作為的におおい隠しているのではないのか?
 

 すくなくとも本殿から伝わってくるのは、人々に理解されることもなく、敗者として歴史の片隅に追いやられたことに対する無念の思いだった。そしてそれは彼だけじゃない。
 人類の歴史は戦いの歴史だというけれど、有史以来人間はつねに土地や食料、あるいは権力や嫉妬、憎しみのために争い続けてきた。戦いになればかならず敗者と勝者にわかれる。
 

 いつの時代も歴史は勝者の理論でつづられてきた。
 たとえば9世紀初頭、征夷大将軍坂之上田村麻呂は蝦夷を討伐したことで有名だよね。けれど蝦夷の側からみれば、それは大和朝廷の侵略にほかならない。侵略を討伐と言い換えられて、鬼として歴史の闇に葬られていった無数の人々の思いがそこにある。
 

 あるいは第二次世界大戦で惨敗した日本は、東京裁判でどのように裁かれたのか。敗戦で受けた痛手は大きい。戦後60年が過ぎた今も侵略者の国として靖国問題をはじめ、歴史認識を問われつづけている。
 

 けれどそれは、アメリカをはじめとした連合国側の勝者の理論だということに気づいているだろうか? 暮れに処刑されたフセインは客観的な視点で公正な裁判を受けることができただろうか? 視点が違えば、同じ結果であっても、その意味するところは大きく変わってしまう。
 

 生きている以上、勝つこともあれば負けることもある。それは時の運なので受け入れるよりしかたがない。けれどわたしたちは歴史の闇に葬られた無数の人々の屍のうえで生きているということに、ほんの少し思いをめぐらせてみてもいい。
 

 この国で生きた無数の人々の思いが伝わってくる。
 わかってほしい。理解してほしい。ただ自分たちの信じる道にしたがって懸命に生きたことを理解して欲しい。どうか生きた証を抹殺しないでほしい。
 

 歴史の表舞台にでることもなく死んでいった無数の人々の思いが御祭神の心と重なってゆく。歴史を作ったのは大国主命というたったひとりの英雄でもければ、神武天皇でも織田信長でもない。この地で生まれ、ここで育った、名も知らぬ無数の人々がこの国を作った。その象徴が出雲大社の御祭神だった。
 
 
 境内の気がかすかにざわめき始めていた。
 なにかが変わる。
 それはたとえていうなら時限爆弾ならぬ、時限怨念解除装置みたいなものかな。ときが満ちれば御祭神の凍った心が氷解するように細工されていたのだとしたら、出雲レイラインを作り、時の権力者の命ずるまま御祭神を封印するのに一役買った呪術師もなかなか粋なはからいをするね。それがこの日、2006年11月22日なのだとしたら、お見事としかいいようがない。
 

 まるで氷が解け始めるように、ゆっくりとなにかが変化してゆく。
 ゆっくりと境内を散策しながら時を待った。
 

 やがて、
 一瞬木々がざわめいた。
 思わず本殿を見あげると、心眼に眩しい光が炸裂するのが映った。
  

 ――歓喜!
 

 その瞬間、レイラインが起動し始めた。
 強い気の流れが出雲から大江山、伊吹山、富士山を走り、太平洋に抜ける。さらに富士山から一方は伊勢へ、もう一方は鹿島、そして諏訪へと移動してゆく。さらに列島を包む六芒星レイラインが起動する。やがてそれは巨大なエネルギーの奔流となって日本列島のレイラインに次々と点火してゆく。これで出雲の御祭神は本来の御祭神としての機能を果たすことができる。
 
 
 わたしは心の中でそっと御祭神に聞いた。
 
 
「本当の名は何という?」
 

 光となった御祭神が遠くで短く答えた。
 

 ・・・・え・・・?
 

 思わず耳を疑った。
 御祭神は眩しい光となって大地や空の粒子と同化しながら、天を駆け上ってゆく。もはや過去となった、ひとであった頃の名前にこだわって引き止めることもないか。
 わたしは口の中で、その名前を反芻してみた。
 

 大国主命と呼ばれた御祭神の本当の名。
 それは――
 

 カ ム イ ワ レ ニ ギ ハ ヤ ヒ
 

2007年1月24日 
 

◆古代幻視シリーズ◆
古代幻視シリーズはレイライン・カテゴリに含まれますが、連載ものになっているので、上から順番に読んでいくと分かりやすいです。
 

・シャーマニズムと裏付け調査 2007年1月27日
・簡単古代史(記紀)入門 2007年1月28日
・古代幻視 1  饒速日尊 2007年1月28日
・古代幻視 2 滋賀県鏡山と伊勢遺跡 2007年1月31日
・古代幻視 3 神功皇后 2007年2月2日
・プロメテウスの火 2007年2月6日
・レイライン7 出雲の御祭神 2007年1月24日

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レイライン7 出雲の御祭神」への15件のフィードバック

  1. メイ

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    ありがとうございました。 うれしい!そうですね。 11月22日に石上神社に行った時は感じられなかったニギハヤヒさまが 1月17日にははっきりとお通りになられるお姿を感じました。 白龍でした。 杏子さまほんとうにありがとうございました。みなさまにも感謝をこめて。

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  2. ぼん

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    へー、そうなんですか。 「古代物部氏と『先代旧事本紀』謎-大和王朝以前に、饒速日の尊王朝があった」という本を読みましたが、 考古学的にも大国主命の王朝が大和まで影響範囲を持っていたことが 考えられる、ということが書いてありました。 大物神社の神は、大国主命の和魂でしたっけ? ほんとにつながってるんですねー。 ニギハヤヒ様が解き放たれたら、どうなるんでしょうか??

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  3. キョーコ

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    メイさん おひさしぶりです。 >11月22日に石上神社に行った時は感じられなかったニギハヤヒさまが 1月17日にははっきりとお通りになられるお姿を感じました。 よかったですね。本当はもっと早く記事をアップしようと思っていたのですが、なかなか時間がとれなくて今の時期になってしまいました。 いまはいい形で動いているので安心してね。

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  4. キョーコ

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    ぼんさん こんばんは。 >考古学的にも大国主命の王朝が大和まで影響範囲を持っていたことが考えられる、 纏向遺跡から出雲が大和に大きな影響力をもっていたと考えられる土器(・・・だったと思う)などが見つかっていますよね。 >大物神社の神は、大国主命の和魂でしたっけ? 大物神社の神は、大国主命にむかって、「吾は汝の幸魂奇魂である」と言うんじゃなかったかと思います。 >ニギハヤヒ様が解き放たれたら、どうなるんでしょうか?? いちばんわかりやすい変化はレイラインが整うことによって、沿線上のパワースポットや神社などの気が上がることです。 それから世の中の動きがあわただしくなります。というか、これは昨年11月の話なので、すでにその影響は出始めています。先日の鶴と餅の神示でも示されていましたが、危険と救済が同時進行するので、意識的に物事を選択してゆく必要がありますね。

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  5. テレサ

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    こんばんは~。 とっても具合がすぐれません。変な日本語ですみません。 風邪風なヤツがぶり返してはしつこく傍を離れません。特に鼻から。 ところで、正月にダンナが「スロットのコインが止まらなくなった夢を見て驚いて目をさました」のですが、その時に、「今年は選択を誤らないようにしようね」と話をしたんですよ。 選んだものによっては、コインも吉なのか凶なのか・・・怖いですね~。止まらないんですよ~。 ああ、鼻水止まって~。

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  6. aya

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    キョーコさん、私も前から、出雲大社ならぬ出雲の地を訪れる度に、 ピーンと張り詰めたような独特のただならぬ悲しみのエネルギーを ひしひしと感じていたのですが、やはり御祭神自体も相当苦しんで おられたんですね。今度行った時は、かの地でどんな感じを受けるのか、 私も楽しみです。ちなみに私は出雲地方ではありませんが、 出雲の近くの出身です♪

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  7. ウォッチャー

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    こんにちは 今回のお話はスケールが大きいですね。 大昔、私も「神社は日本中に張り巡らされた、霊的な何かのインターネットみたいなものなのかなぁ?」と、ふと頭に浮かんだことがありました。 さしずめ大きな神社はバックボーン回線といったとこなのでしょうね。 それにしても、神社って一体何のためにあるんでしょうね? キリスト教の教会やモスクも同じような働きがあるんでしょうか・・・?色々考えてしまいます 出雲大社には10年前に行ったことがあります。 その当時は何の感慨もありませんでしたが、日本海が綺麗だったことをよく覚えています。 ちなみに今回が11月22日だと、次に何か起こるのは3月3日なのでしょうか?

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  8. キョーコ

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    テレサさん こんばんは。 鼻水だいじょうぶですか?  風邪(?)かな。それとも浄化かな。どっちだろうね。 スロットルが止まらなくなる夢はすごいね。 まるで博打みたい(笑)。 わたしも選択には気をつけよう。

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  9. キョーコ

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    ayaさん こんばんは。 ayaさんは出雲のご近所だったんですね。 知人の話によると、その方はしょっちゅう出雲に行っているらしいんですが、先日行ってみたらグランディングのエネルギーが強烈になっていたらしいです。

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  10. キョーコ

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    ウォッチャーさん こんばんは。 そうですね。レイラインと関係のある寺社仏閣の場合は、たんに宗教的な施設にとどまらないと思います。キリスト教の教会やモスクとレイラインの関係は調べたことがありませんが、可能性はおおいにあるような気がします。宗教色をはずして土地との関係だけで見ていくと、別の発見がありそうですね。 >ちなみに今回が11月22日だと、次に何か起こるのは3月3日なのでしょうか? ・・・どうなんでしょう??? わたしもいまの段階ではわからないです。いつもわりと間近になってから気づくことが多いんですよ。

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  11. 柴犬

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    キョーコさん コップをスケッチすると時、上からもしくは下から、横から描くかで違う絵になりますよね。侵略者から見ると討伐、でも被侵略者からは侵略である同じ論理だと思います。「観点をどこに置くかで物事は変わって来る。」 私は大学で西洋史専攻でして、今の仕事には全然関係はありません。社会人になり、経営もしくは経済学部を専攻すればよかったなと思う事はありましたが、大学での授業を通じてこの考え方を学び、よい選択だったと思います。確かに正義=勝者の論理です。戦争では勝者が敗者を裁くのですから、必然的に「勝者の論理=正義で裁かれる。」有史以来この原則は普遍的ですね。

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  12. キョーコ

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    柴犬さん コップのスケッチの話はわかりやすいですね。 西洋史専攻だったんですね。たしかに直接仕事には関係ないかもしれませんが、視点をどこに置くかというのは、あらゆることに応用できますものね。 学問って、おとなになってから面白さがわかる部分がありますね。もしいま時間に余裕があるなら、古代史や物理学など、もっと幅広く物事を学びたいなあと思います。

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  13. あー

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    キョ-コさん、はじめまして いつも楽しく読ませていただいています^^ 出雲が機能し出したという事、出雲に住むものとしては とっても嬉しいです 今年の初詣は例年より人出が多く、これも活性化の1つの 例かもしれませんね これからが楽しみです

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  14. キョーコ

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    あーさん はじめまして。 コメントありがとうございます。 出雲にお住まいなんですね。 わたしも去年行きましたが、人間も自然も本当に良いところでした。 初詣の人出の多さも、うなづける気がします。 無意識のうちにいいエネルギーをたくさんもらっているのでしょうね。

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  15. 大和島根

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    いま、薮田絃一郎著「ヤマト王権の誕生」が密かなブームになっていますが、それによると大和にヤマト王権が出来た当初は鉄器をもった出雲族により興されたとの説になっています。  そうすると、がぜんあの有名な出雲の青銅器時代がおわり四隅突出墳丘墓が作られ鉄器の製造が行われたあたりに感心が行きます。当時は、西谷と安来-妻木晩田の2大勢力が形成され、そのどちらかがヤマト王権となったと考えられるのですがどちらなんだろうと思ったりもします。

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